研究課題/領域番号 |
15K16813
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉永 匡史 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (20705298)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 衛府 / 日本古代史 / 唐代史 / 律令 |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績について、以下、中国唐代史と日本古代史に分けて概述する。 まず中国唐代史については、散逸した唐宮衛令の復原を推進した。現時点で全条文の復原には至っていないが、多くの条文について復原私案を作成することができた。現在成稿を進めており、研究期間内の公表を目指している。 次に日本古代史については、日本古代国家の中央武力の特色を解明するために軍事儀礼に着目し、とくに射礼に焦点を当て、古代日本と唐の比較検討を行った。その結果、古代日本では射藝が天皇を頂点とする支配ピラミッドの安定化を支える重要な手段であり、射藝による支配論理は国司が中央と地方の結節点となることで貫徹したことを明らかにした(吉永匡史「律令制下における射藝と支配秩序」、2015年度北陸史学会大会、北陸史学会、2015年11月29日、於・金沢大学サテライトプラザ)。また中央武力の性格解明に関連して、奈良時代末における王統交替の過程と、光仁・桓武両天皇の自己正統化の試みについて検討し、アジア各国の王権に関する比較研究の素材を提示した(吉永匡史「奈良時代末の王統交替 -光仁・桓武朝における正当化と排除-」、第5回若手アジア史論壇、東方学会:若手研究者の研究会等支援事業、3月5日、於・中央大学)。この他、日本平安時代史の重要史料である『朝野群載』の註釈書を、研究会メンバーの一員として執筆・刊行した(佐藤信監修・朝野群載研究会編『朝野群載 巻二十二 校訂と註釈』吉川弘文館、2015年)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果を学会で早速口頭報告し、現在成稿を進めている。また、本研究課題の成果の一部を含む日本古代軍事史の著書の執筆が完了し、平成28年度中に刊行予定である。その他、史料調査・史跡調査も進めており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に準拠しつつ、次年度も研究を推進する。以下、日本古代史と中国唐代史に分けて述べる。 まず日本古代史については、前年度から進めている軍事儀礼の比較研究を継続するとともに、五衛府制の実態的研究を行う。先行研究に導かれつつ、木簡などの実態的史料から、五衛府の具体像をより豊かに明らかにしたい。そして唐の南衙禁軍のシステムと比較検討することで、古代日本と唐における衛府の共通性と差違の意義を解明したい。 次に中国唐代史については、前年度より取り組んでいる唐宮衛令の復原研究を継続する一方で、南衙禁軍の運用システムを考察したい。これは軍事儀礼の検討とも密接に関連してくるが、そのためには宮城内の空間的把握が不可欠であるため、中国において実地調査を行う。あわせて、唐令復原根拠史料の書誌学的検討・調査も併行して実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の物品購入にあたり、予想より安く済んだため、少額の端数が残ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
極めて少額のため、次年度の物品費に充当する。
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