今年度の研究実績について、日本古代史と中国唐代史に分けて概述する。 まず日本古代史については、衛府を中心とした古代日本の中央軍事力と貴族制との関係を検討した。具体的には、日唐間における衛府長官の名称の相違が意味するものを考察し、その成果を「古代日本の中央武力と律令貴族」と題して論文にまとめた。当該論文は、平成30年度中に中国語に翻訳して公表される。さらに、軍事力徴発のあり方に注目し、軍兵の差発を規定した軍防令差兵条の意義を検討した。これは「軍防令と軍事制度―差兵条をめぐって―」と題する論文に成稿しており、平成30年度中に刊行される予定である。くわえて、軍事力の性質を解明する1つの手がかりとして関に注目し、律令制下における関の性格や、関を規定する法の構造・特質を考察した(吉永匡史「律令関制度と「過所木簡」」佐藤信編『律令制と古代国家』吉川弘文館、2018年。吉永匡史「日唐関市令の成立と特質―関にかかわる法規を中心として―」『金沢大学歴史言語文化学系論集』史学・考古学篇10号、2018年)。この他、日本法制史の教科書を分担執筆し、平安時代における法と秩序のあり方についての概説を執筆した(吉永匡史「平安時代の法と支配秩序」出口雄一ほか編『概説 日本法制史』弘文堂、2018年)。 次に中国唐代史については、前年度に引き続いて唐令の復原研究を進め、復原根拠史料の再検討を行った。特に『唐令私記』や北宋天聖令の性格について考察を深め、論考を発表した(吉永匡史「日本書籍中的唐代法制―以唐令復原研究為視角―」『中国古代法律文献研究』11輯、社会科学文献出版社、2017年)。
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