本研究課題にとって最終年度にあたる本年度は、主に研究成果の取りまとめを意識して研究を進めた。まず、2016年度末にロンドンで実施した調査を踏まえ、イギリス海軍による日本近海測量に関する史料の読解を進めるとともに、これまで進めてきたアメリカ海軍による測量活動についても、あわせて研究の取りまとめをおこなった。さらに、夏期や春期の休講期間には、新潟市や福岡県柳川市で史料調査をおこない、欧米諸国の日本近海での活動をうけて、日本側でどのような対応がなされたのか、という点について考察を進めた。史料収集、および史料の読解に関して、研究計画にしたがって作業を進めることができた。 これらの研究を踏まえ、論文としては、『歴史評論』812号(2017年12月)に「幕末期対外関係史研究の現在」と題して成果を発表した。また、イギリス海軍による測量活動に関しては、2018年7月刊行予定の『歴史学研究』で論文を発表する。著書としては、アメリカ海軍による日本近海測量に関わって、『忘れられた黒船―アメリカ北太平洋戦略と日本開国』(講談社)を2017年6月に発表した。本書により、アメリカ海軍の活動については、体系的にまとめることができたと考える。さらに、2017年7月には山口県柳井市で、9月には兵庫県神戸市で、本研究課題での成果も踏まえて、市民向けの講演を実施した。以上のように、論文や著書、あるいは講演のかたちで、研究成果を発信することを積極的に進めてきた。 ただし、本研究では、1850年代から60年代初頭の英米による測量に重点が置かれていたこともあり、1860年代後半の状況については、多くの課題が残されることになった。今後は、1870年代までも視野に入れながら、研究を発展させていきたい。
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