研究課題/領域番号 |
15K16817
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
武井 紀子 弘前大学, 人文学部, 講師 (30736905)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 古代倉庫制度 / 律令制比較研究 / 地方支配構造 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画に基づき、古代倉庫制度の特質を探るべく、六国史・古代法制史料の中から倉庫関係史料の蒐集を行った。古文書における関連資料収集にまで着手できなかったが、おおむね当初の計画通り進めることができた。これにより、倉庫に関わる制度的な研究をさらに進める下地ができたものと考える。 本年度計画の一つである中国唐倉庫令との比較による日本倉庫令の復原研究を進め、日本倉庫令独自の特徴について言及し、江戸時代以来の復原研究の整理を行うとともに、他典籍に引用された逸文からの令文復原に対する注意点を指摘した(武井紀子「日本倉庫令復原研究の現在」『弘前大学國史研究』138号、2015年)。この成果により、日本倉庫令の全体像とその構造が明らかになり、本年度は、これをもとに日唐倉庫令の比較研究の見直しを進めた。これらの最終成果については未だ公表には至っていないが、研究課題年度内での公表を目指したい。 また、倉庫の立地および王権との関係を考えるにあたり、古墳時代の大型倉庫遺跡についての実地調査、関連文献の収集を進めた。今年度は、古代東山道上野国多胡郡の大規模倉庫跡が発見されるなどの機にも恵まれ(高崎市教育委員会による2015年度発掘調査成果による)、関連するシンポジウムに参加するなど情報収集に努めた。これに関連して、古代日本の地方政治に関する研究の一環として、分担執筆した佐藤信〔監修〕朝野群載研究会〔編〕『朝野群載 巻二十二 校訂と註釈』(吉川弘文館、2015年)が刊行された。 さらに、当初最終年度に予定していた城柵施設に関する研究を進め、胆沢城を中心に各城柵の機能と性格について、出土文字資料の整理を行い、それを報告した(「鎮守府胆沢城の昨日と性格」第42回古代城柵官衙検討会、2016年2月14日、於奥州市文化会館)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はおおむね研究計画に沿い順調に研究が進められたと考える。本年度は、昨年度までに行っていた律令をはじめとする倉庫に関する法制史料に対する研究を推し進められたほか、最新の発掘調査成果報告を含む資料・情報を整理し、次年度以降の研究に向けての新たな準備が整った。国内において、数ヶ所遺跡の実見調査に行くことが出来なかった場所があるが、次年度以降調査計画を練り直すことが可能であり、この点は問題とならない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、倉庫関係資料の収集をさらに進めるとともに、中央の蔵庫の出納体制、兵庫など性格について解明を進める。さらに国内の主要な古代倉庫の遺跡について、特に河川と倉庫との関係など立地関係に着目しながら調査研究をおこない、遺跡の性格と倉庫の立地との関係について研究する。また、中国における資料調査・史跡調査等にも対応し、成果の公表に努めたい。
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