研究課題/領域番号 |
15K16822
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
加藤 圭木 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (40732368)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植民地 / 公害 / 環境 / 地域社会 / 朝鮮 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、研究の2年目にあたり、本格的に研究を進める段階となった。 まず、昨年度に引き続き、先行研究等の収集を進めた。日本や韓国で出版された朝鮮工業化政策や地域社会史、さらには前近代の朝鮮や、日本史における公害問題・環境史等について、読み進める作業をおこなった。 さらに、資料の分析を進め、著作や論文をまとめる作業を実施した。具体的には、朝鮮東北部の「開発」政策が地域社会に与えた影響についてさらに研究を進めたが、このなかでもとりわけ雄基地域を対象とした研究において大きな成果があった。雄基における港湾「開発」政策がもたらした矛盾を、地域の有力者層の動きや民族運動の動向などから、具体的に論じることができた。また、論文としてまとめる段階には到っていないが、会寧地域の商工会関連資料の分析を進めた。 公害問題をめぐる研究成果を一般読者に広く伝えるための論考も執筆した。自らが編者としてかかわった東京歴史科学研究会編『歴史を学ぶ人々のために―現在をどう生きるか』(岩波書店、2017年)では、植民地の公害問題について一般向けに叙述することができた。 また、韓国を訪問し、韓国の研究者と情報交換をする機会を持つことができた。この中で、韓国人研究者とともに、ソウルの南山地域における植民地期の史跡を共同踏査することができた。さらには、韓国の仁荷大学校で開催されたシンポジウム「港湾都市、蓄積された過去と未来の発掘」(2016年11月)にて、「朝鮮植民地支配と港湾都市―地域史研究の可能性」と題して、「開発」政策がもたらす矛盾について、地域社会史の視点から報告することができた。 日本国内においては、山口県等の炭鉱地域を踏査し、炭鉱がもたらした災害について理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、教育業務の増大に伴い、作業等の時間を十分に確保できないことがあった。また、研究を進めるなかで、資料状況などにも規定されて、当初の計画とは異なる地域社会の歴史を詳細に掘り下げる方向で研究が進んでいる部分がある。しかし、書籍や論文、一般書などで研究成果を発表することができた。また、韓国での研究発表もおこなえたことから、全体としては順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、本研究課題の最終年度である。引き続き、資料の収集を継続し、分析する。そうした作業の中で、具体的な地域(会寧など)に即した実証研究を進展させるとともに、研究成果を発表するために執筆活動を展開していく。 また、植民地における公害という問題を、より広い文脈に位置づけるためにも、隣接分野の研究成果を吸収する。さらには、植民地研究の動向を整理する論文を執筆し、その中に公害問題を位置づける作業を進める。 韓国との研究交流をさらに進め、研究成果の普及を図る。
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