まず、米国で史料調査を行った。大正七年に鈴木貫太郎が練習艦隊司令官として訪米した時の写真など、貴重な史料が見つかった。 国内の史料調査において『鈴木貫太郎自伝』の作成過程についての史料がみつかった。『自伝』や「終戦の表情」は口述筆記がもととなっているが、みつかった史料によって新たな視点による論文の執筆が可能となった。 宮中関係の史料も集中的に収集した。『昭和天皇実録』には、拝謁者の拝謁時間が書かれていることもあるが、書かれていないこともある。これは特定できなかったか、あるいは、いくつかの説が存在していたためであろう。多くの研究が指摘するように、拝謁時間は重要な意味を持つ。時間が極端に短い場合と長い場合とでは、その内容が異なる可能性がある。そこで、各種の史料から、かなり細かいデータを収集・蓄積し、拝謁時間についての確定作業をすすめている。これらのデータはある重要な事柄が上奏された時期を特定する場合に、有用な情報となり得るだろう。この点については順次、発表していく予定である。 なお、以上とは別に、朝鮮半島、台湾出身者の「特攻」の戦前と戦後についても調査を行った。韓国、台湾側の史料だけではなく、日本側の個人レベルの手記も収集した。従来の研究で取り上げられてきた閉架式の図書館や史料館だけではなく、開架式の図書館、たとえば奈良県立図書情報館の「戦争体験文庫」でも史料調査を行い、史料収集に努めている。個人レベルの手記の場合、本のタイトルだけからは中身がわからないため、開架式の図書館で一冊ごとに中身を確認しながら、史料を収集する必要があろう。これらの研究成果の一部も、近日中に発表を予定している。
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