研究期間内において、昭和天皇だけではなく、鈴木貫太郎や木戸幸一といった宮中関係者の史料を重点的に収集した。また、『昭和天皇実録』の出典にあがっている史料だけではなく、『昭和天皇実録』に登場する個人名をキーワードに、従来、あまり知られていなかった私家本や雑誌記事などを収集することができた。 さらには『昭和天皇実録』に書かれてある拝謁時間(開始から終了時間)のデーターベース化を行った。他の史料も参照にしつつ、より詳細な時間に関する情報を蓄積した。特に『昭和天皇実録』には拝謁の終了時間が書かれていないことが多かったので、有益であった。空襲警報の時間についても調査を行ったところ、様々な点で政治過程に影響が出ていたことが判明した。日本国際政治学会 2015 年度研究大会において「『昭和天皇実録』と日本の終戦」と題して報告を行った。 政治史を「結果」から遡及して理解しようとするのではなく、当時者のその時点での「時間」的な流れの中に立った上で理解するためには、どうしても、「時間」の長さや前後関係を把握しておく必要がある。今後の課題としては、陸軍や海軍、外務省、重臣についても同様のデータを蓄積する必要がある。 研究成果の一部はすでに「『聖断』 と『終戦』の政治過程」(筒井清忠編『昭和史講義 最新研究てみる戦争への道』(筑摩書房、2015 年) 「鈴木貫太郎と日本の『終戦』」(黄自進・劉建輝・戸部良一編『「日中戦争」とは何だったのか』ミネルヴァ書房、2017年)として発表している。また、諸外国でも史料調査を行い、いくつかの発見があった。これらについては近いうちに発表を予定している。
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