本研究は、地域の領主構成を問う視角から室町時代における列島の地域性を解明し、それが生じた理由や経緯について、室町時代的な支配体制が形成される過程と関連づけながら構造的・総合的に検討するものである。 本研究の遂行に際しては、研究代表者の異動の影響によって研究計画の変更が必要となったため、第二年度である2016年度の末に見直しをおこない、①既存の自治体史のみでは情報収集が不十分な地域に関する検討、②史料が多い東寺領に関する検討、③①②と密接に関連しうる政治史に関する検討、という三点に絞って、研究を進めていくこととした。最終年度たる今年度も、この方針に沿うかたちで研究を進めるようにつとめた。
今年度の成果は以下の通り。 ③の政治史関連の検討が引き続き進展し、前年度に引き続いて執筆した康暦の政変前後の政治過程に関する論考1件を公表することができた。②に関しては、本格的な論考の公表は遅れているものの、東寺領備中国新見荘に関する検討を含む論考1件を公表している。①に関しては、前年度に公表した論考のなかで取り上げていた摂津河内和泉の三ヶ国のうち、河内国に関する研究を継続しており、早いうちに関連する論考を公表したいと考えている。このほか、早島大祐氏編の『中近世武家菩提寺の研究』(小さ子社、2019年)にも「大名家の追善仏事と禅宗寺院」というタイトルで論考が近日発表されるが、これは基本的には早島氏を代表とする科研(基盤研究B「中世後期守護創建禅院の基礎的研究─国菩提寺と京菩提寺」)の成果であるものの、一部に本科研の成果を含んでいる。
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