研究課題/領域番号 |
15K16828
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
中村 翼 京都教育大学, 教育学部, 講師 (70748970)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 14世紀 / 東アジア海域 / 日元関係 / 日明関係 / 日麗関係 / 中世日本 / 倭寇 / 琉球 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度までの研究成果にもとづき、14世紀の日中関係の変遷について、東アジア海域交流の担い手が自らをとりまく環境の変化にいかに対応したかという観点から、本研究の総括を目指した。それにあたり、以下の①・②について重点的に取り組んだ。 第一は、14世紀後半における東アジアの動乱が東アジア海域世界に引き起こした大規模な人間の移動に関する検討である(①)。については、まず前年度からの継続として、14世紀~15世紀前半を対象に、主に中国・朝鮮史料から東アジア海域世界における人身売買・人身略取・移民などの事例を収集した。また、あわせて中国・朝鮮における「倭寇」事例の網羅的検出を行った(一部未完成)。それにより、元明交替期の中国における飢饉・流亡と、1350年の朝鮮半島南部沿岸地域における大規模掠奪に始まる「倭寇」との関係を考察し、また中国における「倭寇」事例の時期による変遷、地域の偏りに関しても新知見を得た。この他、朝鮮半島における「倭人」「倭寇」活動エリアの調査として、主に慶尚南道(三浦・巨済島など)を巡検した。 第二は、14世紀後半以降に東アジア海域世界の主要なアクターとなる琉球国をとりまく倭人勢力と王権の関係および、それが日明・日朝関係に及ぼした影響に関する検討である(②)。日元貿易の担い手が元明交替をうけて直面した危機への対応として朝鮮(高麗)・琉球に注目したこと、そして琉球国の確立が沖縄の王権と那覇の外来勢力の連携を重要な要因としたことは従来から指摘がある。その上で本研究では、在那覇の「外来勢力」として日元貿易の重要な担い手であった博多商人および①で検討した「倭寇」に重なる人びとの動きを分析し、華人との協働・競合を念頭に置きつつ、段階的に沖縄の王権との連携が生まれてくる様相を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」に記した①について、中国「倭寇」の時期的変遷および地域的な偏りに関するデータはほぼ集められているが、その要因を明らかにできておらず、論文化を先送りしている。また、本研究の総括として、2018年10月に学会での口頭報告および2019年3月刊行の論文「東アジア海域世界の境界人と政治権力」を期す予定であったが、②については十分な論及ができていないなど(10月の口頭発表後、さらなる検討と情報収集を行ったが、論文には反映していない)、完成度に課題が残った。これらについては、研究期間を延長し、改善を図る。
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今後の研究の推進方策 |
元代から明初期にかけての東アジア海域世界の動向を日本史と関連づけて総合的に論じる際、(A)13世紀後半の蒙古襲来のインパクトと、(B)14世紀後半の元末明初の内乱という二つの局面の関係性を明確にすることが課題となるが、(B)に関して、「研究実績の概要」の①に関して残された課題の検討および②に関する論点整理を試みる。その上で、(A)(B)の関連性について本研究の総括を行い、論文「東アジア海域世界の境界人と政治権力」」(『日本史研究』679号)のアップデートを図りたい。また、本年度に実施を予定していた長崎県対馬での「倭寇」関係の現地調査も、来年度に実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の総括を期すため、研究期間の延長を行った。また一身上の都合により、当初2018年12月に計画していた現地調査(長崎県対馬)を延期した。これを来年度夏以降に行う予定であり、そのための旅費と若干の物品費として使用する。
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