研究課題/領域番号 |
15K16829
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
遠藤 みどり 宮城学院女子大学, 付置研究所, 研究員 (90623611)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 天皇制 / 後宮 / 外戚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は日本古代王権における父権の確立過程を明らかにすることであり、①平安初期における父権の萌芽とその限界、②摂関政治期における父子関係の展開について考察を行うことになっている。 本年度は、上記①の考察を行うため、年度当初の予定通り、奈良・平安初期における父子関係について、当時の母子関係との違いから検討をした。その結果、平安初期までの天皇のキサキは、天皇の「妻」ではなく、天皇の子の「母」として多大な経済的待遇を得ていたが、平安初期の後宮再編策によって、内裏後宮での天皇との同居が始まり、子との同居が解消され、「母」としての経済的待遇は大幅に削減された。その一方、子への経済支援が「父」である天皇によって開始され、天皇の「父」としての側面が強まるかに見えたが、天皇は子とは同居せず、実際の皇子女の養育は「母」の実家である外戚に委ねられたことで、天皇と子の父子関係は間接的なものに留まり、かえって外戚の影響力を高めることとなった。近年、平安前期における内裏内での天皇と母后との同居が、摂関政治の起点として注目されているが、本研究によって、この母后の内裏居住と摂関政治の開始は、母后の「母」としての強さよりもむしろ、キサキの地位転換による天皇や母后の後見としての外戚の役割の高まりによってもたらされたものだと考えられるのである。 以上の結果は、現在執筆中の新書『日本の後宮』(中央公論新社、刊行予定)の第3章第3節および第4章第1節としてまとめ、公表する予定である。 また、あわせて次年度以降行う②の考察に必要な平安中・後期における関係資料の収集も行った。②の考察結果についても、上述の新書第4章としてまとめ、公表する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度当初の予定である①平安初期における父権の萌芽とその限界について考察し、上記のような結論が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、残る②摂関政治期における父子関係の展開について考察を行い、上述の新書の執筆を完了させ、公表する。ただし、2019年度は9月から産休に入るため、研究期間を1年度延長する予定のため、産休前までにある程度の結論を出し、産休明けには新書執筆を進め2020年度中の刊行を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では研究期間は本年度までだったが、出産育児のため2016年度末から1年2ヶ月中断したため、本年度研究を再開し、研究期間も1年延長した。ただし、延長の申請手続きの前に本年度予算の請求手続きを行ったため、本年度が最終年度という当初の計画通り、全額請求したが、研究期間は1年残っているため、次年度も使用できるように計画的に予算を残した。 なお、次年度も5ヶ月ほどで産休育児のために研究中断し、1年延長するため、物品購入や出張など計画的に使用する予定である。
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