本研究の目的は日本古代王権における父権の確立過程を明らかにすることであり、①平安初期における父権の萌芽とその限界、②摂関政治期における父子関係の展開について考察を行うことになっている。 本年度は、昨年度までに得られた①の検討結果を、現在執筆中の新書『日本の後宮』(中央公論新社、刊行予定)の第3章第3節および第4章第1節として、②の検討結果を第4章第2節としてまとめ、上述の新書の執筆を完了させ、公表する予定となっていた。だが、本年度はコロナ対応といった未曾有の事態のため、執筆が遅れてしまった。引き続き執筆を進め、早期の刊行を目指したい。 また、①②の検討結果を含む日本古代の後宮制度の展開過程について、「日本古代キサキ制度の変遷」と題して、日本史研究会例会において研究発表する予定であったが、非常事態宣言発令中の2020年4月25日開催予定であったため延期となり、その後、報告者間の予定が合わず、例会そのものが開催されずに現在に至っている。今後開催する予定で関係各所の調整が続けられているところであるため、調整がつき次第研究報告を行い、その内容を活字化し公表する予定である。 なお、2021年5月30日に開催される歴史学研究会大会古代史部会で、「譲国儀の成立」と題して大会報告を行うことになっている。この報告内でも、平安時代初頭における「父権」の強化とともに、太上天皇の地位確立に伴い、退位後の内裏への立ち入りが忌避されたことで、天皇と同居した母后への父権を強化した外戚家の父兄が天皇を補佐・代行する摂政・関白が成立したとする、本研究によって得られた成果について言及する予定である。
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