研究課題
若手研究(B)
本研究は、天皇親政→摂関政治→院政へと移り変わる平安時代の政治体制について、「家」の形成過程における父権強化の過程のなかで捉え直したものである。特に、天皇の母方親族である外戚が政権の中枢を担う摂関政治は、近年母后の存在に注目が集まっているが、天皇や太上天皇を家長とする「天皇家」確立の過程で、母后の父兄である外戚が、母后とその子である天皇に対して、父院にかわって父権を行使することで出現した政治形態だと結論づけた。
日本古代史
本研究の特色は、これまでの古代王権研究では自明のこととしてほとんど注目されてこなかった父子関係に着目し、母子関係の弱体化と連動的に考察することで、古代王権構造の変遷過程に新たな見解を示した点にある。平安時代の王権内部における父子関係の変遷過程の全体像を抽出することができたことで、奈良時代王権の皇位継承システムとの比較検討によって、それぞれの特質やその変遷を総体的に明らかにし、日本古代の皇位継承システムを長期的に解明でき、日本古代王権研究の進展に寄与することができた。