最終年度となる平成29年度は、前年度までの調査を継続する一方で、研究成果の発信に力を注いだ。学会報告・論文執筆の依頼も多くあったため、それらに応じて発表の機会を得た。詳細は「研究発表」欄に記載の通りだが、とりわけ近世史サマーセミナーと仏教史学会学術大会における報告では、真宗教団の地域的編成の実態や、教団・幕府間交渉時に伝達された独自の思想を提示することができた。また、『日本都市史・建築史事典』では「本寺と城下寺町」を、『日本宗教史のキーワード』では「近世仏教衰微史観」を、そして『山口県史』通史編近世では「第8編第3章 宗教文化の諸相」を、それぞれ執筆した。日本近世史以外の研究者も交えた学会・図書での成果の発表も実現した。 一方、上記の学会報告・論文執筆に集中したこともあり、論文としての発表を計画していた、清光寺の事件をめぐる西本願寺・長州藩間の交渉については発表に至らなかった。また、三業惑乱時の築地御坊を介した西本願寺・幕府間の交渉についても、更なる論文発表には至っていない。学会報告の論文化と合わせ、これらの課題には引き続き取り組みたい。 このような課題はあるものの、研究期間全体を通じて概ね順調に取り組みを進めることができた。すなわち、本山・触頭寺院や幕藩領主と関わる諸文献を検討することで、事実関係と論点を整理し、新たな成果を順次、学会報告や論文によって発信した。これにより、日本の近世中後期における仏教教団の地域的編成とそれに基づく幕藩領主との交渉について究明し、政教関係論の構築に繋げることができた。 なお、研究の遂行に当たっては、松金直美(真宗大谷派教学研究所助手)と林晃弘(東京大学史料編纂所助教)に研究協力者として関連分野の検討を進めて頂いた。松金は東本願寺の教学統制を、林は江戸幕府の寺社政策を、それぞれ主な検討対象とし、学会報告や論文などの成果を上げた。
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