本研究においては近代日本の傷痍軍人研究の中でもとりわけ戦後結成された傷痍軍人会が作成した記録資料の整理を通じて、同会が作成した会員の戦中・戦後の記録資料をデータベース化し、資料そのものの保存活用に向けた基礎作業を行った点である。従来の研究においてはこの種の旧軍人団体が公刊した定期刊行物等を用いて政治史的な観点から圧力団体の動向としてアプローチする研究が主流であったが、それはひとえに史料的な制約によるものが大きい。そのような従来の研究動向に対して本研究においてはそうした旧軍人団体の成員一人一人の軍歴と戦後の生活歴を大阪府という一地域に限定されるものであるとはいえ、全国的に見れば都市部に結成されたことから非常に規模が大きく、なおかつ他の地域に先駆けて結成された団体であるという意味においては他に類を見ない資料群であり、歴史的にも非常に価値の高い資料であるといえる。本研究においてはこの資料群の保存活用に向けた基礎作業を行ったという意味において大きな成果を得ることができた。 既に目録作成が終了した資料については公的な資料保存専門機関に寄贈したところである。また、関連する同会の定期刊行物や図書についても関連する図書館等に寄贈を行った。本研究の研究成果の一部は学会発表と研究論文の発表により行ったところであるが、今後は整理した資料目録の整備及び公刊と、データベース化したデータを用いた分析作業を引き続き進める予定である。
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