研究課題/領域番号 |
15K16833
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
佐藤 雄基 立教大学, 文学部, 准教授 (00726573)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 史料論 / 書札様文書 / 政治的コミュニケーション / 史学史 / 武家文書 / 地下文書 |
研究実績の概要 |
本年度は、近年新たに発表された研究を含めて、書札様文書に関する研究状況の整理を行い、問題の所在の整理に努めた。 鎌倉期における書札様文書の展開について基本的な事実関係の調査・整理を行った。その過程で、室町幕府の御判御教書・御内書への展開を視野に入れて武家文書の書札様を研究する必要上、鎌倉幕府の書札に重点を置いた。その成果は、口頭報告「日本中世における院宣・御教書・直状の展開―所謂「公文書化」をめぐって」(国立歴史民俗博物館共同研究「中世文書の様式と機能および国際比較と活用に関する研究」研究会、2017年3月2日)でまとめ、2017年度中の学会発表および論文投稿を準備中である。 鎌倉期における書札様文書と密接にかかわる武家文書と地下文書についても以下の成果をまとめた。 論文「『入来文書』の構想とその史学史上の位置―日欧の中世史研究からみて―」(海老澤衷他編『朝河貫一と日欧中世史研究』吉川弘文館)では、南九州の武家文書「入来文書」について、武家文書としての特徴とその近代史学史上の位置を論じた。 地域社会における文書実践について、春田直紀編『中世地下文書の世界』(勉誠出版、2017年5月刊行予定)に論文「「地下」とは何か」及び論文「秦家文書」を執筆した。若狭国多烏浦(現在福井県小浜市)に伝わった「秦家文書」を素材にして、地域社会の文書実践において文書様式それ自体のもつ機能について論じた。これによって鎌倉期における文書世界の拡大(武家・地下)の全体像のなかで書札様文書の展開を捉える見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度行う予定であった「金沢文庫古文書」の調査に先んじて、同文書群以外に残る武家文書の書札の調査を行ったためである。「金沢文庫古文書」を後回しにしたのは、それが文書群としてもつ質量、個性を鑑み、他と同様に扱えないと判断したためである。但し、それ以外の文書群の分析を優先したために、次年度における「金沢文庫古文書」の分析は比較的スムーズに行うことができると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
「金沢文庫古文書」の調査・分析を中心にして、鎌倉後期における書札様文書の展開を重点的に検討する。それによって中世前期から中世後期への展開について新たな見通しを得ることを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
鎌倉後期の関連史料が当初の予想よりも多かったため、年度途中での研究計画を変更し、「金沢文庫古文書」の分析を次年度回しにした。したがって、次年度の研究計画のために繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究費については、次年度回しにした「金沢文庫文書」など鎌倉後期の関連史料集・文献の収集や検討にあてる。本年度と次年度で研究計画の順番の入れ替わりが生じ、研究費の使用に前後が生じただけであり、大枠での研究計画自体には大きな変更は生じていない。
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