研究実績の概要 |
最終年度である本年度はこれまでの調査結果の整理とその公表準備を進めた。本科研では平安・鎌倉時代の文書の総合的な分析を通じて、書状の存在形態・利用形態について平安期から鎌倉期にかけていくつかの段階に分けて整理するとともに、政治構造や社会秩序の変化との相互関係も見出すことができた。 本研究の一環を踏まえて、新たな中世史像を一般向けに紹介した高橋典幸・五味文彦編『中世史講義』(ちくま新書)を分担執筆した(第2章「院政期の政治と社会」)。また、本研究の結果得られた鎌倉時代像を踏まえて、従来の古文書学・法制史研究に対する書評論文を2本執筆した。 本研究の成果を踏まえて国際学会での発表を行った。第七届“中国古文書学”国際学術研討会 (河北師範大学、中華人民共和国石家庄市、2018年9月15日)において「日本古文書和書状:从古代到中世紀」と題して、古代から中世にかけての書状の通史に関する報告を行った。また、4th congress of the Asian Association of World Historians (AAWH)(in Osaka University Nakanoshima Center, 2019年1月5日)では朝鮮史・ベトナム史・中国史の研究者とともに "The Influence of Chinese Seals, Signatures and Monograms on Official Documents in Pre-modern Japan, Korea and Vietnam: A New Methodological Approach to East Asian Comparative History"というパネルをオーガナイザーとして組織し、日本中世の印章と花押についてSeals and Kao-signatures in medieval and early modern Japanと題する報告を行い、比較古文書学のための問題提起を行った。 さらに、本研究の成果をもとに、平安期の文書史に関する論文を執筆中である。
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