本研究の目的は、佐倉藩堀田家家臣の4家を対象とし、史料整理を行ったうえで、(1)生活実態、(2)「家」観念、(3)周辺地域との関係といった切り口から、各家が近世・近代移行期をどのように経験したかを分析し、当該期の「家」の実像を追究することである。 近世から近代にかけて、「家」はいかなる変容を遂げたのか。従来、近代「家」制度は、近世武士の「家」を範型に再編したもの、という指摘がある。この適否を検討するためには、従来から研究蓄積のある制度史のみではなく、個別の「家」に焦点を当て、各家の史料から実証的に近世・近代移行期における実像を究明することが必要である。限られた事例からではあるが、本研究を通じて、「家」の変容を明らかにするための素材と論点を提起することを目指した。 課題遂行の過程で、旧・山形藩家臣の家に伝存する文書を調査する機会を得た。本研究課題の主たる対象である佐倉藩は、近世後期に出羽国村山郡(現・山形市)に飛地領を有していた。飛地領に近接する山形藩の家臣についての調査からは、佐倉藩の研究にも資する情報が得られる可能性があるため、補助事業期間の延長を申請した。 よって2018年度は、上記の山形藩関係の史料調査・分析を実行しつつ、これまでの調査内容とあわせ、研究成果をまとめていくことを目指した。その結果、上述の山形藩家臣の家文書の整理作業は、一部の写真撮影を残してほぼ終えることができた。また、幕末期の佐倉藩家臣団の構造を知るための基礎的史料である、当該期の「分限帳」について、翻刻・校訂を終えて史料集を刊行することができた。
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