平成30年度は、STEP2 本格研究期間②にあたり、申請時の計画に沿って、年度最初に1度完成させた西安相家巷出土秦封泥からみた秦の郡制に関する原稿の修正に取組んだ。研究代表者の執筆原稿については、識者より問題設定の明確化や郡名の考証にとどまらず郡官の説明が必要であること、封泥以外の簡牘資料の更新や研究成果の示し方への注意等、さまざまなご意見をいただいた。そのため、半年の時間をかけて執筆原稿の見直しに取り組んだ。結果的に問題の所在や論文の位置づけが以前より明確になり、平成27年度~平成30年度の4年間の集大成となる成果をまとめることに成功した。平成27年度からの訪問調査(杭州・北京・西安/国内では観峰館、大谷大学博物館、東京国立博物館等)、文献調査(文献購入借受・複写を含む)を基礎に研究代表者が進めてきた秦封泥に関する研究は一つの区切りを迎えた。 なお、本年度は南京訪問を予定していたが、関係者からの情報により、南京芸蘭斉美術館の開館状況などに疑問がもたれたため、本年度の出張は見送った。 最終年度となる本年度は次年度以降につなげる研究協議もおこなった。本年度日本国内における封泥研究の第一人者にご教示いただく機会も得られ、研究の幅を広げることとができた。 最終年度、別の面で重要な収穫であったのは、所属大学で受け入れた若手研究者より任紅雨編『中国封泥大系』(上・下冊)をご紹介いただき、そちらを購入できたことである。最終年度もまもなく終了という時期での入手のため、最終成果に反映するのは難しい状況であったが、これまでの骨格を提供してきた周暁陸・路東之編『秦封泥集』(三秦出版社、2000年)や傅嘉儀編『秦封泥彙攷』(上海書店出版社、2007年)等の情報を新しい資料を含めて更新することができるものと期待している。
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