最終年度は、これまでにフエ周辺において収集した史資料をもとに、これまで自身が進めてきたフエ周辺の農村史研究を加筆修正したうえで、本としてまとめた。同書は専著(上田新也『近世ベトナムの政治と社会』大阪大学出版会、2019年)として、3月31日に出版済みである。またフエ周辺において収集した史料をもとにベトナム研究者会議の大会(於東京大学駒場キャンパス、2018年11月18日)パネルタイトル:ベトナム近世・近代史研究の最前線:漢喃史料からのアプローチ)において「フエ近郊集落における家族形成:18世紀後半の『園簿』の分析」と題して研究報告し、18世紀末のフエ周辺村落では妻方居住が行われていた可能性が高いことを明らかにした。これは前近代ベトナムのの民衆レベルでは夫方居住に偏向した屋敷地共住集団が存在し、これが現在のゾンホと呼ばれる父系親族集団の原型となったことを示唆する。
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