研究課題/領域番号 |
15K16847
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
海老根 量介 学習院大学, 付置研究所, 助教 (30736020)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 包山楚簡 / 文書簡 / 卜筮祭祷簡 / 日書 |
研究実績の概要 |
本年度も昨年度に引き続き、包山楚簡の読解と訳注の作成作業を進めた。包山楚簡の中でも、特に裁判関係の文書簡について考察を深めた。ここ数年、岳麓秦簡や里耶秦簡など、秦漢時代の裁判関係・法律行政関係の出土史料が多く公開され、研究も盛んになっている。その影響を受けてか、包山楚簡の裁判関係の文書についてもにわかに論文が増加傾向にあり、専著の出版も少なくない。そこで、それらの論著を網羅的に集め、内容を読み込んで訳注の内容に反映することにつとめた。包山楚簡に関する論文や著作については、昨年度までに大部分を収集し終えていたが、一部の日本では入手することが困難な論文が残されたままになっていた。それらについては、長期休暇を利用して中国国家図書館を訪問し、収集を行うことができた。加えて、清華簡など戦国竹簡の公開は継続しているため、それらの文献や研究をチェックし、最新の古文字研究の成果を包山楚簡の訳注にも反映させている。 また、卜筮祭祷簡との関わりが指摘される「日書」についても研究を進めている。まず、「日書」が戦国時代の楚においてどのように誕生していくかを、当時の社会と結びつけながら論じた。戦国初期~中期の「日書」については史料が残っていないため不明確なことが多いが、この時代の楚の社会や制度を知る手がかりとして包山楚簡を利用しながら研究を行った。また、秦漢期に受け継がれた「日書」が、どのように当時の人々、特に下級官吏たちに利用されているかを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、包山楚簡の訳注を公開し、それに基づく研究を進めている予定であったが、包山楚簡に関する中国国内での研究の進展が見られ、また新出土文字資料も多数公開されているため、その成果を吸収する必要があり、その作業に時間を取られた。結果として、まだ訳注の完成には至っていない。その一方で、包山楚簡を利用した研究についてはまだ論文の形にはなっていないものの、積み重ねがある程度できており、論文の構想は出来上がっている。また、包山楚簡そのものではないが、関連する内容も多い「日書」の研究は当初よりも進み、本年度中には楚から秦漢に至るまでの「日書」の展開について、ひととおりの素描を成果として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、本年度は包山楚簡に関する研究が思うように進まず、また学会などで報告する機会も得られなかったため、当初の計画よりも研究期間を延長することにした。2018年度は最終年度となるので、研究期間のまとめとして、包山楚簡のできるだけ多くの部分についての訳注を公表することを目指す。また、中国で開催される国際学会において報告する機会がすでに得られており、包山楚簡に関する報告を行う予定である。2018年度中には、その報告内容も論文化して公表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題では包山楚簡の訳注作業を進めているが、新出楚簡の研究成果を反映しきれておらず、まだ公開できる段階には至っていない。そこで研究期間を延長し、来年度中の訳注の刊行を目指したい。また、今年度は国内外の学会で研究成果を報告する機会が思うように得られなかった。来年度はすでに武漢で開催される「楚文化与長江中遊早期開発国際学術研討会」にて包山楚簡に関する報告をすることが決まっており、その渡航費に充てたい。
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