研究課題/領域番号 |
15K16849
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
澤井 一彰 関西大学, 文学部, 准教授 (80635855)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自然災害 / 環境史 / 東洋史 / 地中海世界 / オスマン朝 |
研究実績の概要 |
初年度にあたる平成27年度は、トルコ共和国のイスタンブルにある首相府オスマン文書館に赴き、本研究課題に関わる一次史料の調査を実施した。具体的には、16世紀後半から17世紀初頭に作成された勅令の写しを集めた『枢機勅令簿』を中心に、本研究の根幹にかかわるイスタンブルの都市火災と復興に際しての木材需要についての文書史料を収集した。その結果、これまで必ずしもあきらかではなかった16世紀後半のイスタンブルにおける都市火災の詳細についてのデータを収集するとともに、1660年に発生した「イスタンブル大火」後の材木供給についての史料を新たに発見することができた。 同時に、本来は平成28年度に予定していたトプカプ宮殿博物館文書館所蔵の史料についても包括的に調査し、関連する文書をCD-ROMに記録して持ち帰ることができた。ただし、18世紀に作成された関連史料については、所蔵史料の点数が予想以上に多かったために限られた滞在期間のうちに調査を完了させることはできなかった。そのため、18世紀の史料については、来年度以降にあらためて調査を再開することとした。 さらにイスタンブル滞在中には、新たに出版された1894年のイスタンブル大火についての研究書を含む多くの関連書籍を購入することができた。 研究成果の発信としては、3月にギリシャのイオニア大学で行われた国際シンポジウムにおいて、イスタンブルで発生した自然災害史研究の現状と今後の課題について英語で発表したことをはじめ、国内外の複数の研究会において、本研究課題に関わる成果の一部を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」においても述べたように、平成27年度に実施予定であった首相府オスマン文書館における関連史料の調査・収集のほかに、本来は平成28年度に予定していたトプカプ宮殿博物館文書館に所蔵されている史料についても調査と収集を行うことができた。 また、研究協力者として参加している他の科研(基盤研究A:地中海世界における市民の危機対応とグローバル・ネットワーク、研究代表者:大月康弘一橋大学教授)よって企画された国際シンポジウムや、他のプロジェクト(人命環境アーカイブズの過去・現在・未来に関する双方向的研究、研究代表者:渡辺浩一国文学研究資料館教授)による研究会のおかげで、予想よりも早い段階で中間報告を行う機会を得ることができた。以上の理由によって、「現在までの進捗状況」を(1)当初の計画以上に進展している。とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、以下のように計画している。 平成28年度の夏には、当初の計画に従ってトルコ共和国のイスタンブルを再び訪問し、首相府オスマン文書館における文書史料の調査を継続するとともに、年代記等の記述史料の調査のためにスレイマニイェ図書館を訪問することを予定している。この際には、研究分担者として参加している他の科研(基盤研究A:中近世地中海史の発展的研究: グローバルな時代環境での広域的交流と全体構造、研究代表者:亀長洋子学習院大学教授)とも共同するかたちで、イスタンブルの市内調査および近隣のブルサやイズニクといった古都の実地調査を行い、今後の比較研究に資する準備作業を行う。同時にイスタンブル大学文学部において、国際シンポジウムを主催する。 また11月には、参加している他のプロジェクト(人命環境アーカイブズの過去・現在・未来に関する双方向的研究、研究代表者:渡辺浩一国文学研究資料館教授)と共同で、ロンドン大学歴史研究所において開催される国際シンポジウムCities and disasters: urban adaptability and resilience in historyに参加し、イスタンブルの自然災害史についての報告を行う予定である。 さらに年明けには、パリの国立文書館を訪問し、これも従来の予定通り、近世のイスタンブルに駐在していたフランス使節に関連する史料を調査・収集することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施計画書の提出後に、参加する他のプロジェクト(人命環境アーカイブズの過去・現在・未来に関する双方向的研究、研究代表者:渡辺浩一国文学研究資料館教授)より、イスタンブルの史料調査が予算上可能であるとの連絡を受けたため、夏のイスタンブル調査を同プロジェクトの予算を用いて合同で行った。これによって、夏期にイスタンブルに往復するために確保されていた渡航費用と滞在費および日当分が、そのまま翌年度に持ち越されることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度(平成28年度)の夏と冬にそれぞれ予定されている史料調査の期間を延ばし、関連する史料を包括的に収集することを目指す。あるいは研究の進捗状況によっては、イタリアのヴェネツィアやモデナの文書館に収蔵されている関連史料を追加で調査収集することも検討する。平成27年度から繰り越された額は、以上の海外における史料調査に際して、航空券代や延長された期間の滞在費・日当に充当される。
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