研究の最終年にあたる2018年度は、11月4日京都大学文学部において開催された東洋史研究会大会において、「1660年のイスタンブル大火とその歴史的評価」と題する研究発表を行った。また、2019年2月と3月にも、それぞれ学習院大学と国文学研究資料館において研究報告を行った。 それに先立つ8月には、最後の現地調査として、イタリア南部のプーリア地方からアドリア海を挟んで対岸に位置するアルバニアにかけての地域において現地調査を実施した。またこの間、ドイツのデュースブルク・エッセン大学でサバティカル中のアッティラ・アイテキン准教授(中東工科大学)とともに、オスマン朝において主要燃料が薪炭から石炭へと切り替わる時期や要因について、今後の共同研究の可能性について協議を行った。また、経由地であるイスタンブルにおいても、イスタンブル・オカン大学のメフメト・アーキフ・ポロイ教員の招請で同大学に赴き、現学長も交えて今後の研究課題のひとつとして考えているオスマン朝の法制史におけるハラーム・ハラール問題についての罰則適用についての共同研究にかかわる会合を実施した。 加えて、研究論文としては「16世紀後半のイスタンブルにおける人口規模」が『歴史学研究』no.977に、「イスタンブルの「イスラーム化」と「教会」のモスクへの転用-モスク転用の時期の分析を中心に-」が『ヨーロッパ文化史研究』第20号に、それぞれ掲載された。 最後に、いまだ「研究実績」として結実してはいないものの、オーガナイザーとして苦労を重ねてきたにもかかわらず、2017年7月に発生したトルコ共和国におけるクーデタ未遂事件の影響で中止のやむなきに至った国際シンポジウムについて、本科研による研究期間が終了する直前にあらためて開催するめどをつけることができたことを付記して、最終年度における研究実績の概要を締めくくることにしたい。
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