(最終年度に実施した研究の成果)本年度は,山西省中南部における北朝~隋期の交通路と,摩崖・石窟についての調査・研究を行い,四年間の成果の集大成である報告論文集を執筆・発行した。今年度の補助金は,中国での現地調査・学会参加費用と,関係書籍および必要な物品の購入,報告書の発行等に充てた。 〇現地調査等に関して:2018年7月,山西省晋中・晋城・運城市において,各地の遺跡等に対するフィールドワーク等を行った。特筆すべき成果としては,北朝期の古道と見られる鼓鐘道を実際に走破したことと,重要な史料であるにも関わらず現存場所が不明であった「楊標造像記」を,垣曲県にて確認・調査できたことが挙げられる。その後,広西省桂林にて開催された「第六届中国中古史前沿論壇」にて,「中古時期長治・高平地区的道路交通」という報告を行った。 〇成果に関して:上述の報告(後に論文集に採録される予定である:原稿提出済)のほか,本研究の成果の一部を「北朝~隋代における沁河流域の交通路―摩崖・石窟の位置を手がかりとして―」として発表した。また以前の学会報告が数篇,論文集に掲載あるいは掲載予定となっている。
(研究期間全体を通じて実施した研究の成果)本研究は,先学の研究の上に,摩崖石刻及び石窟の位置情報と,現在の交通路を重ね合わせ検討することで,北朝~隋代の華北における交通路の姿をできる限り復元するということを目標とするものであった。実際成し得た部分について述べると,山西省の東部を中心に,河南・河北の一部に及ぶ地域を対象として調査・検討を行い得た。もちろん交通路の全てを確定するには至らなかったものの,今後実際に発掘を交えつつ旧道の遺構を捜索し,具体的な経路を特定していくに際し,本研究で得られた当該時期の交通路に関する情報は,非常に有用であると確信する。
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