研究課題/領域番号 |
15K16851
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
毛利 英介 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (10633662)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 遼 / 金 / 宋 |
研究実績の概要 |
論文としては、「陳襄「神宗皇帝即位使遼語録」注釈稿」が掲載決定済みである。陳襄『使遼語録』は以前にも記したように本課題において扱うに相応しい史料であり、それに対する地味ではあるが基礎的な作業の公表にいたった点において、一定の学術的価値が存すると自任する。その他に別に記すように論文一本・書評一本が公刊された。 口頭発表は「『紹興講和録』再探―作為君臣関係期金宋関係研究的線索―」を行った。『紹興講和録』は1140年前後において金・南宋間で交わされた外交文書を収録した佚書で、現在では『三朝北盟会編』及び『建炎以来繋年要録』に一部が収録される形で閲覧が可能であり、当該時期の外交関係について知るための極めて重要な史料となっている。かかる史料に対して、口頭発表の段階ながらその基礎的な検討を公にすることが出来たことは、金・南宋間の使者の往来を中心とした外交関係をテーマとする本課題において重要な成果と位置付けられる。その他にも別記のように口頭発表を一回行った。 出張としては、国外では八月・九月にそれぞれ中国で調査を行った。調査地域は、前者が河北省・山西省、後者が吉林省であり、いずれも遼金時代における交通上の要衝を踏査したほか、文物保護機関等で石刻資料の調査も併せて実施したものであり、本課題の実施として相応しいものとなった。 国内出張では、引き続き国学院大学を会場として開催されている国書研究会に参加し、陳襄「使遼語録」の検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度報告書の「今後の研究の推進方策」欄では、当該年度において「引き続き陳襄「使遼語録」の検討を行い、一定の成果の公表を目指す」「金・南宋関係に関する重要な史料である『三朝北盟会編』所収「紹興講和録」・「紹興甲寅通和録」の検討を行う」「現地調査や内外の学会への参加のために出張を見込む」とした。 「研究実績の概要」に示した通りいずれも実現しており、上記のような評価を下すものである。
|
今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度に当たり、これまで研究遂行の順序を組み替えつつ実施しているなかで、主要な研究対象として掲げた文献史料のうち「重明節館伴語録」に関してのみ現状では成果が出せていない。よって、今年度は同史料の検討を行う必要がある。 ただし、同史料は金・南宋間の日常的な外交の現場を叙述したものであり、特別な事件が一切描かれないことに特徴があるため、いかなる形で成果を出すかは難しいところがある。そこで、まず当面は口頭発表レベルまでの成果を目指すこととする。 その際の具体的手法としては、地の文における語彙(例えば私覿・土物など)及び定型的な挨拶の表現などの分析を近似の史料との比較から行うことや、当該史料が金・南宋間の名分的関係に変化が生じた大定和議以降の時期の史料であることより大定和議以前の状況と比較することなどを想定している。 その他、現地調査として金界壕の訪問を計画する。これは、まず金の対外関係として漠北との関係はその重要な一つであり、さらに本課題の主要なテーマである金・南宋関係の全体的理解にも必須であるからである。
|