最終年度の当初計画としては、「重明節館伴語録」に関する口頭報告を行うことを具体的な課題として掲げた。そしてこの課題に関しては、「倪思『重明節館伴語録』について」(第208回宋代史談話会、2018年9月29日、大阪市立大学)として実施した。これにより、交付申請書に記した四史料のうち「思陵録」・「重明節館伴語録」を全面的に利用した成果を公表したこととなったほか、同じく「使金賀生辰還復命表」についても論文中でその重要部分に着目した記述を行っている。『中興礼書』については、諸般の事情により「神宗皇帝即位使遼語録」の研究に転換したが、これについても文章を公刊している。 以上より、計画に一定の変更は生じたが、当初の課題は全体として概ね実行したと評価できる。そしてその結果、特に12世紀後半に金・南宋間で往来した使者の活動及びそれに伴う諸事象が多く明らかとなったとともに、12世紀前半期の状況に関する研究が十分でないことが逆に明らかとなってきた。これについては、新たに採択された研究課題として2019年度以降に取り組んで行くこととなる。 その他、最終年度に公表した文章としては「Recent Japanese Scholarship on the Multi-State Order in East Eurasia from the Tenth to Thirteenth Centuries」(『Journal of Song-Yuan Studies』47、193-205頁、 2019年1月、共著)が、口頭報告としては「遼宋及び金宋間における擬制親族関係補論」(関西大学東西学術研究所2018年度第13回研究例会、2018年12月8日、関西大学)があり、更に「十五年も待っていたのだ!―南宋孝宗内禅と対金関係」(『アジア遊学』233、2019)が間もなく公刊される。
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