本研究では、中国王朝による江南支配のあり方が、南宋から明代にかけてどう変容したのかを追究した。南宋時代については、南宋後期の史彌遠政権から賈似道政権にかけての強権政治が、モンゴルの脅威に対抗するための戦時体制として形成されていったことを明らかにした。また元朝は帝国全体の一体的な支配を維持するために、南宋の戦時体制によって生み出された公田からの税糧を重視したが、当時の江南は水害が多発する状況にあった。元朝は江南の富裕層と対立しつつ水利政策を推進したが、抜本的に解決することはできず、その解決は明朝にまで持ち越されることになったのである。
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