研究課題/領域番号 |
15K16860
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
左近 幸村 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (30609011)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ロシア史 / 海事史 / 帝国論 |
研究実績の概要 |
研究開始の初年度は、英語やロシア語で本研究の構想を発信した。ロシア史の会合、経済史の会合など、多様な専門家から意見を伺うことを心掛けた。具体的には、5月にシンガポールのNanyang Technological Universityで、19世紀末から20世紀初頭のロシア極東と東アジアの経済関係を労働力移動の点から考察した報告を行い、7月には北海道大学のスラブ・ユーラシア研究センターの国際シンポジウムでロシア帝国の茶貿易に関する報告を、8月には幕張で開かれたロシア東欧研究者の国際会議でロシア帝国の汽船会社に関する報告を、3月には大阪大学の国際ワークショップでロシア極東と東アジアの関係を、「脱亜」「入亜」という原暉之氏が提唱した概念をもとに分析した報告を行った。これらの報告は、2年目以降に活字にしていく予定である。また、本研究の概略をロシア語でまとめて早稲田大学ロシア研究所の報告集に寄稿した。 調査としては、9月にモスクワの国立図書館とペテルブルグの国立歴史文書館に行き、黒海から東地中海にかけてのロシアの海運ネットワークに関する史料を中心に収集した。これらロシア汽船貿易社やロシア・ドナウ汽船などの汽船会社に関する社則や政府、民間の議論を記録した史料を分析し、筆者がこれまで行っていた義勇艦隊の研究と接合することにより、ユーラシアの東西にまたがるロシア帝国の海運ネットワークの戦略と実態を把握することが可能になると考えられる。 以上の活動を通じて、ロシア船の航路発達に対するロシア政府とイギリス帝国の認識の違いが浮き彫りになるとともに、ロシアの海運政策史の中でも、セルゲイ・ヴィッテが特別な位置を占めている可能性が出てきた。これらの課題は、2年目に取り組んでいく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英語やロシア語で本研究の構想を発表しつつ多様な専門の場で研究を進めたため、様々な立場から有益なアドバイスを得ることができ、今後の課題が明らかになるとともに、本研究が国際的に見ても通用するものであることが確認できた。史料収集という点でも、2年目以降に取り組むべき第一次世界大戦前の黒海・東地中海の航路に関する史料を多く収集することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ロシアの汽船会社の内部資料の分析を進め、経営実態を明らかにしていく。必要に応じて、モスクワやペテルブルグ、あるいはイギリスで史料収集を行う。同時に、ヴィッテの市場観と貿易政策を分析し、それが帝政末期のロシアと世界経済の中で持った意味を明らかにする。 研究発表としては、海運の研究を通じて得た知見を活かし、ロシア帝国が第一次世界大戦前の世界経済の一体化にどのように反応したかを考察した論文を執筆し、2017年出版予定のロシア史の論集に寄稿する。また2016年10月のロシア史研究会の大会でヴィッテに関する研究成果を報告し、ロシア帝国の東西をトータルに捉えることを試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国内外の出版予定を考慮し、文献購入費を少し次年度に回したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
ロシア史とグローバルヒストリーに関する文献購入代に充てる。
|