研究課題/領域番号 |
15K16868
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
久保田 慎二 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (00609901)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 先商文化 / 下七垣文化 / 二里頭文化 / 殷王朝 / 夏王朝 / 鬲 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、夏王朝と交代し殷王朝を成立させた先商文化、つまり考古学文化としての下七垣文化の社会構造を明らかにする点にある。 上記目的を達成するにあたり、平成27年度は主に考古学的な分析を進めてきた。まずは下七垣文化の時間軸を設定する必要があるため、土器編年の構築を行った。分析対象の中心とした河南省鶴壁市の劉荘遺跡から出土する鬲・豆・盆の3器種について分類作業を行い、鬲を5型式、盆Ⅰを4型式、盆Ⅱを4型式、豆Ⅰを4型式、豆Ⅱを3型式に細分した。そして、他遺跡の層位関係や切り合いから時間的前後関係を明らかにし、土器編年を構築した。それに基づき、鶴壁遺跡の墓地が3時期にわたり次第に形成されたことを明らかにした。 次に、その3時期を基準として、鶴壁遺跡の墓の規模・副葬品・葬具・構造などに注目してデータベースを構築した。そして、それぞれの属性の差異と相関から劉荘遺跡における階層性の変遷を明らかにした。加えて、墓の平面分布の変遷や配列から劉荘墓地が二つの集団により形成されたと考えた。 以上が平成27年度の研究実績であるが、研究の軸となる土器編年については、2月21日から24日にかけて、河南省文物考古研究所で土器実見に係る資料調査を行った。主に、最も時間的特徴を示しやすい鬲について調査を行い、本研究で構築した土器編年について大きな変更を加える必要がないことを確認した。また、当初は今後の調査について打ち合わせを行う予定であったが、劉荘遺跡の発掘担当者である趙新平氏が入院されたとのことで、実現することができなかった。したがって、平成28年度の早い段階で現地を訪問し、具体的な計画を立てるようにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度については、当初の予定通りに研究を進めることができたと考える。 劉荘遺跡を中心とした土器による下七垣文化の年代観の確定、劉荘遺跡の墓地内における墓の変遷と集団構造の検討、墓の諸属性の比較による階層性の検討など、いずれも順調に研究計画に沿って分析を進めることができた。特に劉荘遺跡で復元した下七垣文化の社会構造を、下七垣文化に属するその他の遺跡からも検証できた点、また同時代の二里頭文化や下七垣文化に後続する二里岡期の社会構造と考古学的な比較を行えた点は、大きな収穫として挙げることができる。ただし、本来、夏季に行う予定であった河南省文物考古研究所における現地調査については、日程の調整が難航したため、冬季に変更せざるを得なかったが、これについても調査内容は当初の予定通り十分に充実したものとなった。 ただし、平成28年度の調査予定について現地研究者と話し合いの場を持てなかった点は予定と異なる。上記したように、河南省文物考古研究所の担当者が体調を崩したとの情報が入り、今後の劉荘遺跡の研究について若干の調整が必要となる可能性がある。 以上より、研究自体は極めて順調に進めることができたが、平成28年度の調査予定の件を考慮し、自己点検をおおむね順調に進展したと評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、基本的には当初の研究計画に沿って進めていく。ただし、前記した理由があるため、まず河南省文物考古研究所内における劉荘遺跡の扱いについて現地と連絡を取りながら明らかにしたい。本研究課題では、土器と人骨を扱うことを予定しているため、それらの遺物の管理担当者などを把握し、現地で資料調査を行う段取りを整える必要がある。その上で、夏季以降に、現地で歯冠計測による調査を行えるよう準備する。ただし、本研究は、あくまでも下七垣文化の社会構造を明らかにする点にあるため、考古学的手法、自然科学的手法を広く活用し、多面的に研究課題へアプローチするつもりである。
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