研究課題/領域番号 |
15K16872
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷澤 亜里 九州大学, 附属図書館, 助教 (50749471)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 玉類 / 流通 / 副葬 / 弥生時代 / 古墳時代 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本列島弥生時代から古墳時代における玉類の流通・消費の具体像を復元し、当該時期に進行した古代国家形成過程に、物質文化としての玉類が果たした機能を明らかにすることである。平成28年度は、前年度に引き続き、分析対象のデータ収集とデータベース化、要素間の関係の分析を行った。具体的には以下の通りである。 1)近畿から関東にかけての地域の資料のデータ収集を行い、一部は観察調査を実施した(於 群馬県埋蔵文化財調査事業団など)。これにより、古墳時代前期の関東において生産された石製管玉や水晶製・瑪瑙製玉類の特徴を把握することができたとともに、次年度に資料調査を進めるうえでの基礎データを準備することができた。 2)古墳時代前期の「畿内」の古墳から出土し、出土位置の照合の可能な資料の観察調査を行った。具体的には、橿原考古学研究所、大阪大学考古学研究室で資料調査を実施した。その結果、使用時の位置によって玉類のセット内容が異なる事例を追加することができた。これにより、2015年度に得られた、古墳前期における玉類の使い分けに関する研究成果が、より確からしいことを確認できた。 3)西日本の弥生時代後期~古墳時代前期における墳丘墓・古墳の築造動向、他の副葬品の保有状況と、玉類の副葬状況との比較検討を行った。その結果、銅鏡の保有状況と玉類の保有状況とに連動がみられる事例を確認できた。この点は、次年度に東日本の様相と比較を行う予定である。 4)以上の結果の一部は、6月に行われたSEAA7(東アジア考古学会第7回世界大会)、8月に行われた第12回九州嶺南合同考古学大会、9月に行われたWAC8(第8回世界考古学会議京都大会)にて口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、予定していた近畿地方と東日本出土資料の観察調査を行うことができた。東日本の資料は、来年度も調査を継続するが、調査実施のための基礎データを整えることができた。また、前年度にデータを収集した西日本での、墳丘墓・古墳の築造動向と玉類副葬状況との関係の分析も進めることができた。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
資料の実見調査を継続して行う。東日本の資料を中心としつつ、西日本でも、これまでに調査が実施できなかった資料を補足的に調査する予定である。また、弥生時代後期~古墳時代前期における墳丘墓・古墳の築造動向、他の副葬品の保有状況と、玉類の副葬状況との関係についての平成28年度の研究成果は、平成29年度中にデータを充実させたうえで、論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な要因は、スケジュールの関係で東日本での調査の回数が減り、旅費の支出が当初の計画よりも少なくなったことと、データの整理を自身で実施する事により、データ入力補助の人件費がなくなったことにある。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も東日本を含む各地での資料調査を実施予定であるため、この際の調査旅費として使用する予定である。
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