研究課題/領域番号 |
15K16875
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
長井 謙治 東北芸術工科大学, 芸術学部, 講師 (20647028)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 実験考古学 / 更新世・完新世 / 人類移住 / 石器文化伝統 / 岩陰遺跡 |
研究実績の概要 |
本研究では更新世・完新世におけるモンゴロイドの東アジア規模でみた移住・拡散問題について、実験考古学的な視点を加味した考古資料の比較を通して、極東アジア人類社会の歴史的動態を相対化することを目的としている。初年度は資料収集期間として、現地調査による資料見学と文献収集を重点的に進めた。具体的な内容と成果は以下のとおりである。 7月から10月までは現地調査準備と文献渉猟、現地調査周辺における聞き込み、土地状況調査を行った。文献収集に際して、東京大学考古学研究室と同大学総合研究博物館蔵書の悉皆調査を行った。関連文献については大方の調査を終えた。また、石器資料「比較」のための技術指標の開発に向けた準備作業として、オレゴン大学研究員のジャック・ワット博士を山形に招聘して、日向洞窟遺跡の実見と出土遺物の検討を共同で行った。 11月、山形県における人類移住の痕跡を求めて、山形市南陽市岩部山館跡に所在する未調査岩陰(立岩岩陰)の試掘調査を7日間行った。調査は、東北芸術工科大学歴史遺産学科長井ゼミナールの学生が中心となり実施、南陽市教育員会の協力を得た。旧石器・縄文時代の遺物の検出には至らなかったものの、弥生時代に比定される土器、石器、炭化物等を検出した。 以上のように、本年度は当初計画した調査を始動させることができて、次年度での継続調査に基づく資料蓄積のための調査環境を整備することができた。また、現地調査を通じて、次年度以降の具体的な調査計画を立てることを可能とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ほぼ計画通りに資料調査を実施することができた。とりわけ、山形県南陽市と高畠町での岩陰遺跡調査においては、当初の見込み以上の成果を得ることができ、資料収集と次年度以降の調査準備という点では研究は順調に進展している。しかし、その一方、それらの資料整理と調査に時間を要し、十分な分析には至らなかった。また、当初予定していた復元製作に基づく実験考古学的研究に関する問題提起を年度内に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果を最大限に得るため、研究計画の部分的な修正を図りつつ、現地調査を継続実施する。併せて実験考古学的な研究基盤を形成する。具体的な成果公開を意識し、国際学会発表や国際ワークショップでの研究公開を積極的に行う。実験考古学研究と考古資料の比較研究を具体化させて、モデル化を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究採択後、最大の成果を導くことができるよう、支出計画の見直しを行った。とりわけ2年度以降実施予定の研究協力者との国内発掘調査実施については、人類大移動モデルを構築するための本研究の根幹をなすものと考えられたため、調査費用、関係者の招聘旅費、人件費・謝金等を見直し、繰越金をそのための費用に充てることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
2年度以降に実施予定の発掘調査における関係者招聘旅費(国内移動費)、調査協力者への謝金、自然科学分析に関する委託に係る経費に利用する予定である。また、初年度に不十分であった資料の見学旅費、研究環境整備のための物品費にも一部用いる。
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