研究課題/領域番号 |
15K16877
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長屋 憲慶 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (60647098)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒエラコンポリス遺跡 / ビーズ穴あけ方法 / 石製容器穿孔法 / SEM観察 |
研究実績の概要 |
本研究は、初期国家形成期のエジプトにおけるモノづくりに関する技術の発達過程を明らかにすることを目的としている。特に、考古学的にその痕跡を追いやすい穿孔技術に注目し、ビーズと石製容器の穴あけの方法を実験考古学的アプローチにより明らかにする。28年度は、エジプト・ヒエラコンポリス遺跡出土ビーズに焦点を当て、以下の研究を実施した。 1)追加実験:ビーズの原材料となる石材の中で最も硬質なカーネリアン(紅玉髄)に対し、フリント製ドリルによる穴あけ実験を実施した。 2)SEM観察:上記実験資料および遺跡出土資料のシリコンレプリカを作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を実施した。 以上の作業から、当時のビーズの穴あけには、1)石製ドリルを用いた回転による穿孔と、2)尖頭形の工具を用いた打撃による穿孔という少なくとも二種類の方法が用いられていたことが明らかになった(Nagaya, K. 2016 "More Piercing Insights," Nekhen News 28, pp. 11-12, London)。尚、後述の理由により本年度はエジプトでの資料調査を実施できなかった。そのため、石製容器資料に関するデータ収集をおこなわず、これに替わり、ビーズ製作に不可欠な研磨作業の検討と、エジプトの周辺地域(西アジア)での石器製作技術に関する研究をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エジプト国内の内政状況の悪化により調査許可が下りず、28年度1月に計画していたヒエラコンポリス遺跡での資料調査を実施することが出来なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
ビーズ製作技術については、SEM観察の成果を予備的な論文にまとめてすでに発表した(Nagaya 2016)。29年度は、未観察の資料の顕微鏡観察を進め、国内学会(日本西アジア考古学会、29年7月予定、エントリー受理済)で発表予定である。 石製容器については、29年度前半に追加の製作実験を実施する。この成果については、9月中旬に開催される国際学会(Egypt at its Origins, エントリー受理済)で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
エジプト国内の内政状況悪化により、28年度1月に計画していた現地での資料調査が実施できなかった。このため、予定していた旅費がそのまま残ることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
本助成金の執行期間をを29年度まで1年延長した。29年度1月に再び現地調査を実施して助成金を使用する予定である。
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