紀元前4千年紀後半、初期国家形成期のエジプトでは、種々の石製品が支配者の社会的地位を表象するアイテムとして製作された。これらの製作において、穿孔(穴あけ)は職人にとって不可欠な技術であった。本研究はこの中で、ビーズと石製容器の製作技法の詳細を石器使用痕観察と穿孔実験から明らかにした。 重要な点として、当時の職人は高い技術を有していただけではなく、彼らの雇い主(支配者)の要請に応えるために極めて効率的な製作技法・作業工程を編み出していた。つまり、王朝時代にみられるファラオの豪華な品々の源流は、先行するこの時代の支配者と職人の相互作用により達成された技術開発に求められる。
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