本年度の研究成果を大きく分けると、(1)将来人口推計システムの基盤データベースとなる地域別人口マイクロデータの推計手法に関する精度比較研究の実施とその研究成果の論文作成を進め、(2)将来人口推計システムのベースとなる動的マイクロシミュレーションおよびそこに組み込む人口動態モデルに関する調査・分析を行った。それぞれの研究成果を具体的に説明すると、(1)マイクロシミュレーション研究において、代表的な地域別人口データの推計手法として知られる2手法に対して、推計精度を複数の評価指標の観点から比較検討を行った。その結果、全国版の小地域人口マイクロデータの構築において使用した同様の推計手法(組合せ最適化アルゴリズム)が、推計精度の点でも優れていることが確認できた。本研究成果の内容に関しては、大学の紀要論文として報告を行った。次に(2)将来人口推計システムに関しては、結婚や就業に関する日本人の家族形成を定量化する目的でロジットモデルの研究成果の利用を検討してきた。なお、昨年度から進めてきた本成果は、地理学の主要雑誌の一つに論文が掲載されるに至った。将来人口推計システムは、当初の計画では、市区町村よりも細かい1kmメッシュ単位での作成を予定していたが、最新の国勢調査の提供が開始されるなど、本年度も継続してプロトタイプモデルの作成と改良を進める必要があった。今後は、本年度に得られた研究成果をまとめ、地理学や地理情報科学、都市計画学の分野での研究発表と論文作成を進めていきたい。
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