研究課題/領域番号 |
15K16884
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 理絵 山形大学, 農学部, 准教授 (50601390)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 産物 / 産物帳 / 地理科往来 / データベース / 動植物 / 分布 / 過去 |
研究実績の概要 |
本研究は、『諸国産物帳』および各地の産物データの資料的特徴や地理情報を明らかにすることを目指した地理学的研究である。1735年に幕府は各藩に産物帳の作成を命じ、提出させている。幕府に集められた産物帳がその後集約されたかは定かでなく、産物帳そのものの所在も不明であるが、各地にはその際に作成された産物帳の写しが残されている。そこには、当時の産物として認識されていた動植物(海藻)・昆虫などが記載されている。本研究は、こうした地方に残された産物帳を利用し、最終的には日本における過去の動植物の分布範囲を復元することで、近年進行してきた地球規模の環境改変の広がりやその強度を知るための空間データとして供することを企図している。 このため、平成27年度は【各地の産物データの所在調査と地理情報の導出】を行った。まず、科学書院から復刻された『諸国産物帳集成』を購入し、これまでよく知られている各地の『諸国産物帳』の特徴を把握した。とくに重視したのは、産物の種類および産物の産出地の有無である。 次に『諸国産物帳集成』には含まれていない各地の産物データの所蔵調査にあたった。まずは山形県内で行った。その中で注目されたのが①山形県立博物館教育資料館、②酒田市光丘文庫および③市立米沢図書館である。①には近世の教科書である「往来物」のうち、地理科に分類されるものが11点所蔵されている。また、②には庄内の産物をとどめた「松竹往来」「庄内往来」が、③には「米沢産物集」が残されている。前2者は『諸国産物帳』とは無関係であるが、当時の地域の特産物をとどめている。また、後者は幕府に提出した産物帳の写しである。 まずは、これらについて産物と産出地についてデータベース化を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度に予定していた秋田県・岩手県については、いまだ所蔵調査ができていないため。それは27年度に行った山形県内所蔵の前近代における産物に関する資料が分散して現存し、またその解読も容易でないためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、収集した山形県内の産物帳による地理情報のデータベース化を急ぐとともに、岩手・秋田県まで調査範囲を広げて、前近代における産物帳を収集する。 また、平行してデータベース化された山形県の各種産物について、現存しない産物や不明な名称の産物について解明する。さらに産出地についても現在のどこにあたるのか、調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
『諸国産物帳』復刻版と『近世植物・動物・鉱物図譜集成』復刻版の購入が遅れていることと、岩手・秋田県での調査が未実施だったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
『諸国産物帳』復刻版と『近世植物・動物・鉱物図譜集成』復刻版の購入を進めるとともに、岩手・秋田県での調査を実施するため、次年度使用額を使用する予定である。
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