研究課題/領域番号 |
15K16884
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 理絵 山形大学, 農学部, 准教授 (50601390)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動植物 / 産物帳 / 地誌 / 近世 / 東北 / 分布 |
研究実績の概要 |
本研究は、近世期の動植物の分布域復元を最終目的とし、各種産物データの資料的特徴および地理情報を明らかにする地理学的な基礎研究である。江戸時代中頃より国内の各地では官撰・私撰に問わず多様な地誌や産物帳が作られ、それらには当時、地域の産物として認識されていた植物・動物・鉱物が記載されている。その中には、現在、当該地で生息(自生)が確認できない動植物が含まれている。18世紀に全国同一基準で作成された『諸国産物帳』と各地に残る個別の産物データとを組み合わせ、近世における動植物の生息(自生)範囲を広域的に復元できれば、近年進行してきた環境改変の広がりを照射させる有益な空間データとなりうる。地球規模の気候変動や地球温暖化が、動植物の生息域や生態系にどのような影響を与えているのかといった課題は、IPCCの報告書にみるとおり喫緊の世界的な関心事となっている。地理学の分野でも気候変動が生態系に及ぼす影響についての研究は依然として多い。こうした使命感の中で本研究に着手した。 平成29年度は、岩手県における『明治前期岩手県管轄地誌』を入手した。この資料は、明治初期に、岩手県の全市町村ごとの、人口・耕地面積・家畜数および産物が記載されている。そこで、これらのデータベースの作成を進めた。同時にこの資料に記載の産物の特徴について検討した。その結果、気仙郡綾里村の「ヒロハクサフジ」は、現在の岩手県レッドデータに位置付けられ、絶滅危惧増大の種に位置付けられている。また、和賀郡田代村の「テン」は現在では生息数激減が指摘されている。このように、上記資料で現在と分布が異なるもの、あるいはその生態が環境改変との関連で特徴的である動植物の抽出を行い、その分布域の比較を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
産物の名称が、現在と異なる場合、植物辞典等には掲載されていない場合が多く、方名(現地での呼び名)での同定が求められる。方名で動植物を特定する場合は、同時代および近い時代の民俗調査報告などを参考にすることで解決されるが、それに想定以上に時間を割かれたためである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、山形県庄内地方および置賜地方ならび岩手県の全域で産物データベースが完成した。これらの中で、同じ種のものを抽出し、その分布域の特徴を見出す作業を進めている。今後、作業補助者を増やし、まずは、同種の特定に急ぐこととした。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度は当初、データベース作成完了後に各動植物の分布をGIS等で可視化する予定であったが、現況ではその段階まで到達していないため、当初、予算に計上していたArcGISのソフトおよびベースマップ(デジタルデータ)の購入を行っていない。このため当初計画の予算を使用していない。
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