研究課題/領域番号 |
15K16885
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
山本 匡毅 相模女子大学, 人間社会学部, 准教授 (30455555)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サプライチェーン / 非大都市圏 / 大手重工メーカー / 集積 / 分散 / サプライヤー / 生産立地 |
研究実績の概要 |
2017年度は、これまでの研究成果をまとめ、公表する年となった。同年度に学会発表を産業学会全国研究会と経済地理学会大会の2回行い、論文投稿も『産業学会研究年報』に行った。 今年度の研究では、航空機産業のサプライチェーンが中部圏を中心として、関西圏、首都圏のような大都市圏に集中していたものが、変化していることが浮き彫りになった。すなわち民間航空機の生産増加や生産機種の再編の中で、大手重工メーカーの工場立地が中部圏中心から、中部圏、関西圏、首都圏さらには非大都市圏である広島県へと分散立地をするようになってきている。この傾向は、かつての主力機種であるB767型機と最新鋭のB777X型機で顕著であった。 また三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所を事例として、そのサプライチェーンを時系列で分析した。その結果、同製作所のサプライヤーは2005年~2007年頃には中部圏を中心とするサプライヤーに依存しており、新規参入企業も少なかったものが、その後には中部圏外のサプライヤーが増加し始め、かつ新規参入企業が増加していったことが明らかになった。それゆえ地域的には北海道と沖縄以外の地域にサプライヤーが立地し、空間的には集積と分散が交錯してることが示された。 このことは航空機産業の集積地に位置づけられる中部圏としては、将来的に航空機産業集積が維持・発展できるかという分岐点に立っているといえる。従前の議論では、B787型機における生産の集積によって、中部圏の航空機産業集積は厚みを増していた。しかしながら、それ前後の機種の生産が中部圏からシフトしており、中部圏の航空機産業集積の発展は予断は許さないことが提示されている。 航空機産業のサプライチェーンは、空間的に集中しつつ、分散も行われており、生産に掛かるコストと設備との兼ね合いで、生産立地が重層的になっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度は、これまでの研究の遅延を取り戻すために、最大限の努力を行った。その結果、学会発表2回、論文投稿1回という結果に結実した。また投稿した論文は査読をパスし、掲載が決定している。また学会発表のうち、産業学会全国研究会は依頼による研究発表であり、本研究の学会での一定の評価を意味していると考えられる。 しかしながら、2017年4月に所属大学を異動したため、新たな職場環境となった。特に講義科目、演習科目はすべてが新規立ち上げの科目となり、1年目である2017年度は、授業準備に忙殺される結果となった。その結果、従来の研究の遅延は一定程度取り戻せたものの、定量的分析を行うアンケート調査は実施できなかった。 そのため、残された研究課題について、研究延長を申請することとし、2018年度に研究の完成を目指して研究を継続することとした。2018年度は所属大学の授業準備も落ち着くことが予想され、研究目標の達成が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、定量的分析を中心に研究を行う。第一に航空機クラスターの企業を対象にアンケート調査を実施する。また併せて、研究成果の公表を進める。既に産業学会全国研究会(於 佐賀大学)に発表をエントリーした。研究の最終年として、残された研究課題を粛々と進め、当初の目的を達成できるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は、前任校から現任校へ異動した。そのため、授業(年間12科目)を新規に立ち上げることが求められた。加えて、地域連携担当となったことから、地方の複数の地域との連携関係の構築も進めなければならなかった。かかる業務多忙が研究の進捗を遅らせることになった。加えて、前任校時代の研究遅延が影響し、2017年度に十分な研究進捗の回復を図ることができなかった。 それゆえ、2018年度に研究期間を延長させていただき、当初の研究目的を果たせるように万全を期すこととした。
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