本研究では、研究目的の達成に向けてA~Cの3つの作業課題を設定した。2017年度は、これまでの研究成果を考慮しつつ、作業課題C(三大都市圏における世帯構成の地理的変化に関するメカニズムの解明とモデル化)と関連して、引き続き大阪府吹田市に注目して分析を進めた。1980年以降のマンション単位の居住者特性を分類した結果、分譲マンションの大部分は1980年代ではファミリー向けであったが、それらのマンションのほとんどで、2010年までに高齢化と世帯規模の縮小が進んでいた。2000年代以降、いわゆる都心回帰の流れを受けて供給が進んだ分譲マンションにも、単身世帯が一定の割合で居住しており、将来的には急速な高齢化と世帯規模縮小が進むものと予想された。一方、ファミリー向けの給与住宅および賃貸マンションにおいては、比較的若い世代の親と子供が同居する世帯が多く居住し、分譲マンションのように高齢化が進むことはなく、居住者特性には時系列的に大きな変化は生じなかった。1990年代後半以降、給与住宅は大きく減少し、分譲マンションなどに建て替えられてきており、今後、高齢化が徐々に進行するものと考えられる。これらの研究成果は2学会において発表し、投稿に向けた準備を進めている。 これまでの大都市圏における世帯構成の地理的変化は、住宅の影響を強く受けてきており、主にファミリーが入居してきた分譲住宅では、ライフステージに合わせた世帯規模の変化が生じ、賃貸住宅や給与住宅などでは、間取りに応じた世帯が一定期間で入れ替わりながら居住し、主たる世帯構成は大きく変化してこなかった。しかし、1990年代以降、給与住宅が減少した一方、この時期に供給された分譲住宅には単身世帯の入居も多くなったことが確認され、単身世帯の大幅な増加に寄与しており、世帯構成の地理的変化のメカニズムを変えてきていることが明らかになった。
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