最終年度の成果は,(1)2000年代以降に出店した大規模集客施設の出店場所における過去の土地利用状況の検討と(2)研究者や行政関係者等に対する本研究期間全体を通じて明らかとなった結果の提示である。(1)については,農地・工場区画の転用や丘陵地の開発が2000年以降の出店をもたらしていた点,出店場所周辺の人口分布および出店自治体の都市規模により出店用地に特徴がみられた点,都道府県によって出店用地の傾向が異なる点,の3点を明らかにできた。(2)については,県境地域における大型店出店をめぐる立地調整スキームおよび地域変容に関して「越境地域政策フォーラム」で発表し,流通・小売企業によるドミナント出店・スクラップアンドビルドなどの出店戦略との関係性と,行政による調整システムが企業行動に与える影響についても検討する必要があるという示唆を得ることができた。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は,(1)全国的スケールにおける大規模集客施設データベースの整備とその分析結果の提示,(2)県境地域における大型店出店をめぐる立地調整スキームおよび地域変容の考察の提示,の2点に整理できる。(1)については,越境地域への大規模集客施設の立地が件数・面積ともに全店舗の2割程度を恒常的に占めており,工業系用途地域への立地が比較的多く,県境地域における大型店出店は今後も続くことを指摘できた。(2)については,大型店立地に関する越境地域政策の必要性の提示と,本研究で事例とした九州地方知事会による調整システム構築の評価を行うことができた。ただし現状では具体的な調整は難しく,特に工場跡地など未利用地を有する自治体にとって大規模集客施設の誘致は雇用創出・財政健全化の有効な手段の一つであり,利害関係の調整は極めて困難であることも指摘できた。
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