研究課題/領域番号 |
15K16893
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研究機関 | 鹿児島県立短期大学 |
研究代表者 |
宍戸 克実 鹿児島県立短期大学, その他部局等, 准教授 (30535133)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トルコ / イスタンブル / 社交空間 / 火災保険地図 |
研究実績の概要 |
平成27年度はまず,20世紀初頭のイスタンブル火災保険地図(Jacques Pervitich, Charles Edouard Goad)から社交空間(喫茶施設・酒場・娯楽施設・浴場・歓楽街等)を抽出する作業に着手した。喫茶施設については,その位置情報をweb地図上にプロットし,現存状況調査用の資料作性を行った。社交空間の抽出データは立地や建築形態属性を付して一覧化する作業を進めている。平成28年3月にはイスタンブルのカラキョイ地区,ガラタ地区,ファティフ地区,アクサライ地区,クムカプ地区を対象として,現存する喫茶施設の状況調査を行った。20世紀初頭以降から喫茶施設として継続されている事例は少数ながら確認された。これらの現存施設はたいへん貴重なものであると考えており,改めて詳細な調査を行う予定である。また,用途は変更されているものの,喫茶施設としての建築意匠が継承されている事例は多数確認することができ,喫茶施設の建築形態について建築歴史の観点から考察する材料となりうる。さらに,かつての非ムスリム地区や工房地区には,喫茶施設が集中する固有の分布形態が継承されていることが明らかとなった。特に,非ムスリム地区に歓楽街が形成される様相は,イスタンブル固有の空間特性であるといえる。なお,調査で得られた位置情報,建築形態,用途,機能,周辺環境等は実証的データとして整理し,データベース化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は,地図史料からの施設抽出作業を重点的に行った。史料からの位置情報をweb地図上にプロットすることにより,現地調査において効率的に物件確認を行うことができた。また,20世紀初頭と現在の街区形態の変容・継承についても把握可能となり,たいへん貴重な資料となった。平成28年3月にイスタンブル調査を行ったが,治安情勢悪化の影響を受け,行動範囲を制限せざるを得なかった。大規模な商業エリアは避け,周縁部の居住地区に点在する小規模な商業エリアを重点的に調査した。
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今後の研究の推進方策 |
現地の治安情勢を注視しながら,平成28年度の現地調査期間を決定する予定である。前年度に保留とした大規模商業エリアや,アジア側地区,新市街地区を重点的に調査する。また,喫茶施設以外の社交空間(酒場・娯楽施設・浴場・歓楽街)にも調査対象を展開していく。地図史料と現地調査を主体とした実証的・空間論的な手法により,イスタンブルにおける近現代社交空間の特質と継承・変容過程を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
トルコの治安情勢が不安定であったことから,現地での滞在期間と行動範囲を制限せざるを得なかったため,必要機器の購入を後ろ倒しすることとした。また,国内での研究ミーティングを予定していたが,研究支援者が海外赴任(カイロ)となったため実現しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
トルコの治安情勢の改善が見られるため,今年度は必要機器の購入を計画的に進める。研究支援者との研究ミーティングは一時帰国時,又はイスタンブル現地調査時にカイロへの渡航を組み合わせることを検討する。
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