(1)スペインで行われた世界中東学会での学会発表を行い、研究の基礎となる理論的な部分について成果を発表し、国際的なレベルで研究者との意見交換や学術的交流を行った。 (2)レバノンにおける高齢者施設の調査については前年度から継続して行い、人類学的なフィールドワーク調査を行った。ここでは、運営者、スタッフ、入居者らに対して聞き取り調査を行い、運営、ケアの実践、入居者が入居した経緯などについて資料収集を行った。 (3)フィールドワークの成果を社会に広く発信する雑誌『フィールドプラス』に寄稿し、本研究課題でのフィールドワークの様子を紹介する記事を刊行した。 以上の成果を通じて、レバノンにおける高齢者ケアの現在について、資料収集を進めるとともに、成果の一部を口頭発表や記事にすることで社会への発信を行うことが出来た。特に、資料収集についてはこれまで数カ年継続して築いてきた調査対象者とのラポール形成が円滑に働いたこともあり、今年度はきわめて大きく前進した。 これまでの調査・研究を通じ、レバノンで進展しつつある高齢化について、高齢者施設の現場を見て資料収集を行い、宗派主義的な側面、公的補助の弱さ、スタッフやボランティア等のパーソナルな関係性の重要性、海外移民との関わり、アジア諸国からの移民労働者の家庭内での役割等、高齢化のレバノン的な諸側面についてフィールドワーク資料を得ることができた。この分野については国内で初めての調査・研究成果であり、中東をフィールドとする人類学研究、中東地域研究に新しいトピックをもたらす調査・研究になったと考えられる。
|