イランでは、1990年代以降、政府の産業優先政策や低質ガソリン消費などを起因とする環境問題が深刻化している。そのため、近年は環境問題の観点から都市計画をはじめとする種々の政策の見直しが進められ、このことは人々の環境意識や生活へ影響を与えている。本研究では、近年イランで現出し始めた環境言説およびその実践について調査し、現代イランの社会変容に関する分析を行った。これらの環境言説・実践は、イランの文化歴史的文脈を反映させながら、多様な言説―とりわけ、西洋近代科学に準じた環境観、ナショナリスティックな情操を喚起する環境観、イスラーム教理に基づいた環境概念―が併存関係にあることが明らかになった。
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