本年度はインドネシア西カリマンタン州、中ジャワ州、台湾にて調査を行った。西カリマンタン州の調査では、商業的国際結婚が周辺地域・民族にも拡大するとともに、配偶者を求めてくる外国人の出身国にも変化が見られていることが分かった。その成果は、10月の国際学会にて報告を行った。 台湾では、対中経済依存度を低下させるため、東南アジアへの投資が推進されているが、その中で国際結婚により誕生した新住民第二世代が「東南アジア人材」として注目を浴びている。その政策の変遷について、京都大学台湾研究中心という研究会にて報告を行った。また、移民に対する政策転換に翻弄される「移動する子供たち」についてのエッセイを発表した。他、台湾における商業的国際結婚現象の古典と言える『流離尋岸:台湾的外籍新娘現象』の日本語訳『外国人嫁の台湾』に解説を記すとともに、出版記念イベントでも報告を行った。 また比較として、国際結婚配偶者ではなく、移住労働者を多数台湾へ送り出している中ジャワ州トゥガル、プカロガンにて、労働移住形態の差異について調査を行った。 本年度、9月に香港調査を予定していたが、台風被害のため関西空港が閉鎖され断念せざるを得なかった。 台湾、香港、マレーシア、インドネシアでの実地調査、文献収集調査に基づくと、1990年代末から2000年代半ばに一度ピークを迎え、近年はその商業的国際結婚システムを基盤に、当事者を変えつつ継続していることが分かった。
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