研究実績の概要 |
現在実施されている海外での遺骨収集活動について、フィールドワークと文献調査の両面から取り組んだ。 1.フィールドワーク a)遺骨収集ボランティア団体Aの参与観察:当初はボランティア団体Aによるガダルカナル島での遺骨収容活動について調査する予定であったが、関連団体との兼ね合いから2018年度は派遣活動を主催しなかったため、国内における同団体の会合や訓練活動について調査をおこなった。特に重点的に行なったのは、2016年度から活動を開始している社団法人「戦没者遺骨収集推進協会」の活動への参加者からの聞き取りである。b)パプアニューギニア、ラバウルにおけるインタビュー調査:太平洋戦争当時、パプアニューギニア・ラバウルには司令部が置かれ10万人を超える日本軍の兵士が駐屯していた。現地に住む老人たちの中には太平洋戦争の当時を経験している人もまだ存命しており、その中の一名にインタビューを実施した。また1960,70年代に実施された遺骨収容活動の手伝いをした人物二名にもインタビューを行なった。c)沖縄での慰霊碑および遺骨収集についての調査:ソロモン諸島、パプアニューギニアでの戦争遺物との比較として、沖縄における慰霊碑や遺骨収集の調査を行なった。沖縄本島北部の慰霊碑、および南部の摩文仁を中心とする慰霊碑を見学し、那覇市内にある資料館での文献収集を実施した。 2.文献研究 遺骨収容という目的のために、どのような手段をとるのかを根本から考え直すために、メラネシア地域においてこれまでなされてきたカーゴカルトをめぐる議論を参照して考察を深めた。遺骨収集団の活動の中には、一部に「軍隊的」なスタイルでの行動が含まれる。また彼ら自身、「兵隊さんと同じように振る舞うこと」が重要だというようにも語る。これらの「模倣」行為を、遺骨発見のため、あるいは慰霊のための一手段として位置づけ、カーゴカルトと比較し考察した。
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