研究課題/領域番号 |
15K16903
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
近藤 宏 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (20706668)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 先住民 / パナマ / エンベラ / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究計画の初年度にあたる。2015年8月~9月にかけてパナマ共和国にて、エンベラが設立した共同体企業について現地調査を行った。この企業が実施する森林伐採事業は、パナマ南東部のエンベラ=ウォウナン特別区内に位置する。一方で、当該企業の幹部は都市部に居住している。また、森林伐採事業に許可を与える省庁の事務所は、また別の行政区にある。そこで3つの地区で、聞き取り調査や参与観察を行った。文書も含め基本的な情報を収集できた。また、パナマ共和国滞在中にパナマ大学人文学部で発表を行った。現地の研究者と交流を翌年度以降の研究に生かすことができる。 現地調査を通じて、森林伐採事業の導入の経緯に、中米先住民社会の代表者たちも参加した国際会議があったことが明らかになった。その会議で議論されていた枠組みが、今日のエンベラの事業のおおもとになっているという。それはメキシコでの住民参加の林業をモデルとするものだということだったので、メキシコの森林資源管理に関する文献の収集と講読を進めている。 中南米地域の先住民共同体による森林利用に関する調査として、ゴム経済における先住民社会の位置づけについて文献調査を進めている。そのうち、エクアドルの先住民ルナにとってのゴム経済のありようを分析している民族誌については翻訳も行った。今後は翻訳作業に際して収集した文献の講読を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査では当初予定していた伐出に向けた準備活動の参与観察は、当該活動が調査日程のあいだに実現しなかったため、不可能であった。その期間に様々な聞き取りを進めることができた。2つの集落に居住する人々からこれまでの企業活動や今後の方針ついて様々な見解を聞き取ることができた。特に過年度の伐採地区に赴き聞き取りをすることで、実際の作業のありようについて、より具体的に把握できた。また、今後の経営方針を話し合う集会に複数回、オブザーバーとして参加できた。加えて、共同体企業設立以前の、周辺地域の林業活動の歴史的経緯についても聞き取りができた。来年度以降の企業活動の参与観察に際しても、今年度の調査で聞き取ることができた論点を確認していくことができる。 また企業を運営する先住民自身のみならず、支援するNGOや調査・監督する省庁職員に対しても聞き取りを進めることができた。企業運営は、これらの非先住民組織体との関係から影響を受けることもあるため、今後もこれら機関の関係者に対する聞き取りを重ねることでより立体的に実態を理解できる。このように、次年度以降の研究活動進展させるための取り組みができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度同様に、休業期間に現地調査を進める。また開講期間中には収集した資料の分析と文献購読を進める。現地調査では、今年度聞き取りを行った人々に対して別の観点から聞き取りを進めるほか、対象を増やすようにする。
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