研究課題/領域番号 |
15K16903
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
近藤 宏 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (20706668)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 先住民 / 所有 / 開発 |
研究実績の概要 |
平成28年度は2月にパナマ共和国、エンベラ=ウォウナン特別区内にて現地調査を行なった。今年度は調査対象とする森林伐採事業体が行なう実際の森林伐出活動の参与観察を通して、活動を進める際に築いている異なる社会的機構との関係性やコミュニティ内の関係調整のありかたを確認できた。またとりわけ重要だったのは、2015年の活動から人びとのあいだで領土意識がたかまり、いかに領土を主張する方法が変わったのかを、その背景も含めて確認できた点である。 併せて、事業を支援する(してきた)諸団体への聞き取りを通して、事業の来歴や政策枠組みの系譜について細部を確認できた。次年度以降、パナマ共和国内での森林伐採監査方法が刷新されるという情報も確認できた。後者については、次年度の研究実施にとって重要なものである。 これまでに行なってきた現地調査の成果については、次年度にラテンアメリカ学会での発表予定がある。 現地調査のほか、調査事例とは異なる中南米地域先住民社会にて実施されている先住民共同体の森林伐採事業に関する諸研究の文献調査を進めている。特に、メキシコとグアテマラにおける類似する政策枠組みに関して、人類学のほかに開発学の分野による研究成果を整理している。これはパナマの事例を条件づけている政策枠組みの系譜を記すために必要である作業のほか、現地調査における調査項目の整理のために進めている。二つの異なる取り組みの成果を組み合わせることがこれからの課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度に実施できなかった実際の伐出活動の参与観察を行なえたという点で、大きな進捗があった。実際の作業時に見られる問題解決方法や意見調整の議論を通して、新しい経済活動に対する人びとの態度や所有意識のありようについて調査が進んだ。人びとの活動を通して確認できるのは、政策枠組みが様々な点で従来の経済活動を支えていた考え方とずれを含んでいるという点である。 その点について考察を進めるには、政策枠組みに組み込まれている考え方を検討する必要がある。そこでほかの中南米地域先住民社会での実態に関する諸研究の検討と、森林管理政策の議論の展開の整理に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は計画の最終年にあたる。しかし、研究実績の概要に書いた通り、刷新された森林伐採監査手法がパナマ国内で実施される最初の年度に当たる。そのために現地調査が欠かせない。ただし新たな方法を導入するため、森林伐出事業のスケジュールも変則的になる。現地との連絡を取り調査時期を定める必要があり、春季休業期間に行なう可能性もある。 現地調査の準備以外には、これまで行なった調査成果をもとに学会発表を行なう。それをもとに、成果をまとめる準備を整える。併せて、次の調査に向けて、調査事項の整理も行なう。
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