研究課題/領域番号 |
15K16906
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
中村 真里絵 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (20647424)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 世界遺産 / バンチェン遺跡 / 生活史 / タイ / 文化人類学 |
研究実績の概要 |
初年度である本年度は、研究対象地であるバンチェン遺跡の全体像を把握するための参与観察と地域住民へのインタビュー調査を実施した。さらに、タイ人考古学者と日本人考古学者へのインタビュー調査も実施した。得られたデータをまとめると次のようになる。 (1)地域史の整理:地域住民へのインタビュー調査により収集したエピソードを統合し、1966年のバンチェン遺跡発見以降の地域史について整理し、本研究課題を実施する枠組みを確定した。 (2)バンチェン遺跡発見のインパクト:タイ人研究者、日本人研究者へのインタビュー調査により、バンチェン遺跡発見が当時の考古学会においてどれほど大きな影響力を持っていたのかを明らかにした。 (3)遺物の意味の移行:(1)の地域史の変遷とともに、村人たちにとって遺物がただそこにあるモノから価値のあるモノ、そして保護するべきモノへと、その意味付けが変わっていったことを明らかにした。 (4)タイ国家との関わり:バンチェン国立博物館および世界遺産祭りの参与観察により、バンチェン遺跡における展示やイベントの場において、王室との関わりが強調されていることがわかった。また地域住民にとって、1972年に国王がバンチェンに行幸したことが重要な出来事として記憶されていた。こうした王室とのかかわりが現在のバンチェン遺跡の文化の継承と保護において機能していることが予測できる。この王室を通じたナショナリズムと遺跡の関わりについては次年度以降の調査を実施する際の新たな視角となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度おこなった2度の海外調査(タイ)と国内調査では、地域住民をはじめ、タイ人考古学者、日本人考古学者へインタビューを実施し、多岐にわたるエピソードとまとまったデータを得ることができた。これらは本研究課題をすすめるために基礎となる重要なデータであり、初年度に収集できたことは有益であった。さらに収集したデータを分析し、次年度の研究に向けて重要な視点を得ることができた。 また、初年度の成果の一部を、3月に国立民族学博物館にて連携研究フォーラム「文化遺産の保存と活用:ミュージアムの視点から」にて発表し、参加者と有意義な意見を交えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、タイにて現地調査を実施しデータ収集につとめる他、昨年度に収集したデータの整理、分析した成果を発表していく予定である。 まず、8月に京都で開催される世界考古学会議(WAC18)にて研究成果を口頭にて発表する予定である。その他、商業誌等で広く成果を発表する他、学術論文を執筆する。
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