研究課題/領域番号 |
15K16909
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
橋場 典子 立教大学, 法学部, 特別研究員(日本学術振興会) (90733098)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 法システム / 司法アクセス / 信頼 / ジェンダー / DV |
研究実績の概要 |
本研究は、法システムへのアクセスに伴う原理的な排除性を克服するメカニズムについて、とくに社会的排除状態にある方々のリアリティに着目し、理論と実務の両面から探究を行うものである。前年度までに得られた知見は、①法システムを活用しようとする背景には当事者に身近に接する第三者の態度や雰囲気という言外の要素が重要な意味を持つ点、②当事者の抱える問題を複合的に解決するためには多職種連携が必要不可欠である点、である。 平成29年度は、これまでに得られた上記研究知見をベースに置きつつ、とりわけ法的存在自体に対する拒絶感が強い場合に焦点を当て、法的支援を受け入れることが可能になった背景理由についての聴き取り調査を実施した。 その結果、法的存在自体に対する拒絶感が強い場合においても、第三者が言外に発する属人的要素が法システムの活用を決断する際に重要である点が観察された。この点は、前年度までの知見と共通している。新たに得られた知見としては、特に拒絶感が強い場合において、属人的要素に加え、その「第三者」が「信頼できる人物か否か」という点が重視されている傾向にある点、そしてその「第三者」は、必ずしも専門職(法律専門職、福祉専門職)に限定されず、場合によっては「専門職への信頼」よりも「似たような境遇にいる他者(専門職以外)への信頼」のほうが法システム活用動機としては上回ることもある点、が挙げられる。 平成29年度の聴き取り調査で新たに得られたこの知見は、当事者にとって法システム活用に至るまでの心理的経路と重要となる人物の属性が複数のパターンに分かれて存在していることを実証的に示しており、今後の本研究を深める上で非常に有意義である。 次年度以降は、法的存在に対する拒絶感が強い場合に加え、拒絶感が弱いと思われる場合、そもそも法的問題に気付いていない場合等の事例についてもフィールドワークを実施し分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、拒絶感が強い場合のフィールドワークに加え、DV被害者支援団体へのフィールドワークも予定していた。当初予定していた上記二点については予定通り実施することができたため、平成29年度の研究進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、拒絶感が強い場合、弱い場合、そもそも法的問題に気付いていない場合等の事例についてのフィールドワークを実施する。 次年度(平成30年度)からは、本研究も後半期に入るため、これまでに得られた研究成果を学会や論文等の形で公表していくことにも今まで以上に注力していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の途中から平成29年度にかけて研究中断期間を設けたことにより、国内外におけるフィールドワークを当初予定していた通りには実施することが困難であったため。 平成30年度からは研究に本格的に復帰できる状況のため、国内外への調査、成果報告のための学会参加費や論文投稿にかかる費用を予定通りに支出していく。
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