本研究は、法システムへのアクセスに伴う原理的な排除性を克服するメカニズムについて、とくに社会的排除状態にある方々のリアリティに着目し、理論と実務の両面から探究を行うものである。 助成最終年度にあたる平成30年度は、これまでに得られた上記研究知見をベースに置きつつ、国内外への聴き取り調査を実施した。具体的には、NPO法人や自治体へ赴き、①法的存在自体に対する拒絶感(法拒絶)が強いと思われる場合、②法拒絶が弱いと思われる場合、の双方への聴き取り調査を実施した。 その結果、法的存在自体に対する拒絶感が弱いと思われる場合においても、第三者が言外に発する属人的要素が法システムの活用を決断する際に重要である点が観察された。この点は、前年度までの知見(法拒絶感が強いと思われる場合)とも共通している。また、似たような境遇にいる他者が信頼しているものを信頼する、という傾向も、法システム自体に対する拒絶感の強い場合・弱い場合の双方に共通して見出された点である。
本研究期間全体における一連の聴き取り調査から、本研究のテーマである「法システム自体が持つ排除性」を克服するためには、当事者に関わる人間の「属人性」及び「信頼」が重要であることが分かった。そして、その「信頼」の発生経路には直接的なものと間接的なものの両方が含まれている点、間接的な場合には似たような境遇にいる他者を介した信頼の醸成が有効である点、が示された。
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