研究課題/領域番号 |
15K16910
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
岡崎 まゆみ 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (60724474)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 朝鮮総督府裁判所 / 民事判決原本 / 京城帝国大学 / 東亜法政新聞(法政新聞) / 法の民衆化 / 内鮮一体 / 同化政策 / 慣習調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、外地・朝鮮における「近代法」(特に私法)の伝播過程を明らかにすることを目的とし、初年度である15年度は研究の基礎資料に供すべき以下4種の資料群((1)植民地期朝鮮の民事裁判資料、(2)在朝鮮法律実務家(判事・弁護士)による著作資料(特に雑誌・新聞記事)、(3)法律実務家に対する法学者の見解がわかる資料、(4)その他在外外地法制関連資料)の収集と分析を行った。具体的な調査実施概要は次のとおりである。 (1)16年3月14~17日に韓国・城南市の大法院電算情報センターにて法院記録保存所所蔵・民事判決原本の調査、(2)『朝鮮司法協会雑誌』『朝鮮及満州』『東亜法政新聞』(のち法政警察新聞、法政新聞に改称)をはじめとする当時朝鮮で刊行された雑誌・新聞に掲載の在朝鮮法律実務家の著作資料(特に朝鮮総督府判事によるものを重点的に)収集、(3)朝鮮総督府裁判所の判決文及び関係判事による判例解説に対して、京城帝国大学の法学者(特に有泉亨や西原寛一)や内地法学者が示した見解について、国内で刊行の各種学術雑誌論文を中心に関係著作を収集、(4)16年3月28~4月3日にアメリカ・カリフォルニア大学バークレー校The C. V. Starr East Asian Library所蔵・“Asami collection”(朝鮮総督府判事をつとめた浅見倫太郎が蒐集した朝鮮本コレクション)の調査を実施し、関連資料14件を蒐集した。※(2)(3)は年間を通じ断続的に実施。 以上に基づく主な研究成果報告として、「日本帝國中的知識與權力」工作坊(15年10月26~27日開催)にて「内地人法律実務家の朝鮮認識--家族制度へのまなざし」(台湾・台北市)と題した口頭報告を行い、また『法史学研究会会報』19号に論文「外地・朝鮮の内地人弁護士による朝鮮認識(2)--1920年代・『東亜法政新聞』にみる」を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記(2)(3)(4)の資料収集の状況については順調に進捗しており、特に上記(2)については、16年度の調査実施予定としていた弁護士による著作の収集についても並行して行うことができ、当初の想定以上の進捗状況であるといえる。 ただし、15年度に生じた問題点として2点挙げられる。第1に、上記(1)の民事判決原本の収集について、調査の進捗が遅れている点である。理由は、これまで民事判決原本の閲覧先で資料調査に協力して頂いた担当者の方が部署異動し、新しい担当者の方への本調査の趣旨説明、及び協力要請への同意を得る等に時間を要したためである。第2に、上記(3)のうち、特に内地の法学者は、朝鮮の判決に対する見解について、当初の想定以上に多岐にわたる媒体を通じて発表していることが15年度の調査を通じて判明した。したがって、16年度は調査対象とする資料媒体の範囲を見直す(範囲の拡大を検討する)必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初の年次計画どおりに調査を進める。また、16年度は本研究計画の最終年度であることから、研究成果の公表(特に論文発表)に努めたい。なお調査の際には、15年度の研究進捗状況と課題を踏まえ、具体的に次のことに対応しながら研究を進める。 第1に、上記(1)の民事判決原本調査について、15年度中に新しい担当者の方から本調査への協力要請についての同意を得たことから、15年度中に進捗が遅れていた民事判決原本調査を16年度中の早い時期に重点的に行う。(なお、15年度に生じた問題点を踏まえ、想定外の担当者の異動に備えて、閲覧先外の組織(大法院内)で判決原本調査に従事している専門研究員の方とコンタクトを取り、随時協力要請できるよう対策をとった。)第2に、上記(3)のうち内地の法学者による著作の収集について、調査対象とする資料媒体の範囲を拡大する必要がある。これに伴い、当初予定の資料調査先が大幅に変更することはない(15年度と同様、国内大学所属図書館での調査で足りる)。第3に、16年3月時点で収集した上記(2)(3)の資料について漸次リスト化作業を行っているが、収集した資料量が想定以上の数にのぼることから(特に上記(2)の資料)、作業に時間を費やしているのが現状である。上記(2)(3)の資料数自体の比較検討も本研究の成果を構成する重要な要素になると考えられることから、早急にリスト化作業を完了させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下2点の理由により、次年度使用額が生じた。 第1に、本研究計画の遂行に大きく関係する書籍について科研費により購入予定としていたところ、15年度始めに急遽購入する必要が生じ(15年10月に開催されたシンポジウムでの報告準備のため)、科研費の予算配分前(学内で使用可能となる前)に私費で購入したためである。第2に、韓国で実施予定としていた民事判決原本の調査について、これまで民事判決原本の閲覧先で資料調査に協力して頂いた担当者の方が部署異動し、新しい担当者の方への本調査の趣旨説明、及び協力要請について同意を得ること等に時間を要したため、当初予定していた韓国での調査を行えなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額について、16年度には以下の方法で使用を計画している。 第1に、購入予定としていた書籍分の使用予定額は、15年度の研究遂行のなかで新たに必要が生じた書籍の購入に充てる予定である。第2に、15年度に韓国で実施予定としていた調査は、16年度に繰り延べて行うこととしたため(調査先とは既に調整済みである)、15年度の使用目的と同様に韓国での調査費用に充てる予定である。
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