研究課題/領域番号 |
15K16915
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
見平 典 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (90378513)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 違憲審査制 / 最高裁判所 / 司法政治 / 基礎法学 / 公法学 |
研究実績の概要 |
日米における違憲審査制の発展過程を経験的に解明するため、本年度は主に次の作業に取り組んだ。 (1)中絶問題をめぐるアメリカの憲法過程の展開に関する研究。中絶問題は現代アメリカにおいてもっとも論争的な憲法問題の1つであることから、これをめぐる憲法過程の展開は、アメリカの憲法秩序形成や違憲審査制の特徴をよく示していると考えられる。そこで、本年度は、1970年代から現代に至るまでの中絶問題をめぐるアメリカ憲法過程の展開について、裁判所・政治部門・市民社会の相互作用に焦点を当てながら分析した。そして、三者間の相互作用の多元性・実質性・継続性を生み出している背景的要因や、そのような憲法過程の積極面・消極面について検討を行った。この成果の一部については、論文として公表の予定である。 (2)アメリカにおける少数意見制の展開に関する研究。現代アメリカ連邦最高裁判所においては、少数意見が活発に提出されており、これが違憲審査制の運用に大きな影響を及ぼしている。このため、連邦最高裁判所における少数意見制の展開を理解することは、違憲審査制の発展過程を理解する上でも不可欠である。このような観点から、本年度は、主にアメリカ連邦最高裁判所における19世紀初頭の法廷意見制度導入の背景と、20世紀中期の少数意見の激増の背景について調査した。 (3)滝井繁男・元最高裁判所裁判官の法思想と判決行動に関する研究。2000年代以降、日本の最高裁判所の違憲審査制の運用には変化がみられることが指摘されているが、その変化の背景を理解するために、当時の最高裁判所において重要な役割を担った滝井繁男・元裁判官が法や司法についていかなる思想を有していたのか、また、それが同裁判官の判決行動といかなる関係を持っていたのかについて、検討を行った。この成果の一部については、論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日米における違憲審査制の発展過程を経験的に解明すること、また、それを踏まえて違憲審査制や憲法過程に関する経験理論を形成することを研究課題としている。このような目的の下、本年度(初年度)は、アメリカの違憲審査制の発展過程について、重要な憲法問題(中絶問題)の展開と、重要な規定要因(少数意見制)の展開に焦点を当てながら、複合的に分析を進めることができた。また、日本の違憲審査制の発展過程についても、その重要な時期の裁判官の司法行動について検討を進め、論文を公表することができた。以上より、研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、アメリカにおける違憲審査制の発展過程について、より多角的に分析を進める。すなわち、少数意見制の展開についてより検討を深めるほか、重要判例の個別的分析、裁判官選任制度等の司法諸制度の機能に関する分析などを行い、アメリカの違憲審査制の発展過程について多様な観点からアプローチし、より全体的な理解を得られるようにしたい。 第2に、日本における違憲審査制の発展過程について、アメリカの分析で得られた知見も参照しつつ、より多角的に、また、時間軸を拡げて分析を進めたい。特に、これまで2000年代以降の最高裁判所による違憲審査制の展開に焦点を当ててきたが、これについて引き続き研究を深めるとともに、それ以前の時期についても研究を拡げられるようにしたい。
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